9月30日、大手回転寿司チェーン「かっぱ寿司」を運営する「カッパ・クリエイト」社長の田辺公己容疑者が、競合するライバル店「はま寿司」の営業秘密とされるデータを不正に持ち出したとして逮捕された。
「関係者によると田辺容疑者は、はま寿司を運営するゼンショーホールディングスを退職する直前に当時の部下に指示して、すしの原価や仕入れ値、日次売上などの情報が入ったデータを持ち出したうえ、転職先のカッパ・クリエイト幹部に提供していたといい、不正競争防止法違反容疑で逮捕されました。なお、持ち出されたデータは商品開発部門などにも共有され、組織的に利用していたことからカッパ・クリエイトも同じ容疑で書類送検されたのです」(社会部記者)
かっぱ寿司がはま寿司からデータを盗み利用していたという衝撃の事件だが、実は今年に入って回転寿司業界では不祥事が相次いでいる。今年4月には「文春オンライン」が、山梨県にある「くら寿司」の店長が上司のパワハラが原因で店の駐車場で焼身自死するというショッキングなニュースを報じた。また6月には「スシロー」がテレビCMなどで宣伝していたキャンペーン商品を多くの店舗で販売していなかったことが「おとり広告」になるとして、消費者庁から景品表示法に基づく措置命令を受けている。
「不祥事が相次いでいる原因は、過度な低価格競争が原因と考えられます。回転寿司業界はしばらく業績が右肩上がりで、2020年には新型コロナによる時短営業などの影響で一時落ち込んだものの、翌年にはスシローやくら寿司が最高益を更新するなど、回転寿司の市場規模は7400億円を超えて過去最高となっているのです。そんな絶好調な回転寿司業界ですが、今年3月にマルハニチロが発表した『回転寿司に関する消費者実態調査』によれば、回転寿司店を選ぶ際に重視していることを聞いたところ、『値段が安い』が41.7%で最も多い回答となっている。そんな中、いかに価格を抑えるかが焦点になっており、無理のある営業が歪みを生んでいると言えます」(経済ジャーナリスト)
売上好調のスシローとくら寿司は10月の値上げで税抜100円寿司を廃止したが、はま寿司は継続し、かっぱ寿司はさらに税抜100円寿司を拡大する選択をしている。原材料や物流コストなどの価格上昇が進行する中でもしばらくは低価格競争は続く見通しで、今後さらなるアクシデントが起きなければいいが…。
(小林洋三)