値上げで際立つ「スシロー1人負け」の構図 回転寿司4社の序列に地殻変動も

 あらゆるものの価格が上がる中、回転寿司業界もスシロー、くら寿司の大手2社が昨年10月に値上げ。スシローは10〜30円アップ、くら寿司は「110円/220円」から「115円/165円」への価格改定を行った。一方、はま寿司は昨年5月に値上げしたものの主力の110円と165円皿は価格据え置き。かっぱ寿司に至っては真逆の100円皿の拡大で対抗した。

 その成否について、12月の4社の売り上げ状況からだいたいのところが見えてきた。果たしてその結果は、スシロー1人負けとも言える状況だった。
 
「12月の既存店舗の〈月次売り上げ〉と〈客数〉を見ると、くら寿司がそれぞれ前年同月比で−5.1%、−10.3%、かっぱ寿司がー8.2%、+3.5%だったのに対し、スシローは−22.3%、−31.4%と大きく後退しています。10月に値上げした2社が苦戦する中、1皿100円を維持したかっぱ寿司の健闘が目立つ形ですね」(経済ジャーナリスト)

 なお、はま寿司は単体での月次売り上げは公表していないが、はま寿司全体に近い数字を示すゼンショーホールディングスの「ファストフード」カテゴリーを見ると、22年4〜9月までは売上高+30.5%と好調で、10月以降も価格据え置きなのでおそらくは良い数字を維持していると推測される。

 売り上げ、客数共に苦戦が見えるスシローでは、6月におとり広告で措置命令を受けて以降CMを控えていたものの、12月から再開。にもかかわらず客足は遠のいている。スシローは1月7〜15日に「おすしぜ〜んぶ10%OFF」の23年初フェアを行っているが、その宣伝ポップは「完売次第終了」の但し書きの下にさらに「※」印の注意書きがいくつか付くという、注記が多めのつくり。

 不調の原因はさまざま考えられるだろうが、ネットやSNSでは「シンプルに値上げが原因よね」といった声が多く、「コスパでクオリティ勝負の俺たちのスシローはもういないんだ…」といった書き込みを目にすると、以前のスシローの求心力の在処がよくわかる。

「事実、12月の月次客単価を見ると、スシローは+13.4%、くら寿司+5.8%、かっぱ寿司+4.5%で、スシローの上昇ぶりが目立ちます」(同)

 直近の売り上げや客数といった見かけの数字だけで企業の強さを測ることは出来ない。だがスシローが結果的に他店に比べて高級路線に舵を切ったことは明らか。その影響が経営指標全体にどう反映するか次第では大手4社の序列に地殻変動が起きるかもしれず、まさに今後が注目されるところだ。

(猫間滋)

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