8月1日、厚労省の諮問機関である「中央最低賃金審議会」の小委員会が、最低賃金を31円引き上げることに決めた。昨今の物価高騰を考慮し過去最高の引き上げ額となったが、ネット上では《賃金の引き上げもいいけど、扶養の適用範囲を拡大して欲しい》と懇願する声が相次いでいる。
「最低賃金はすべての労働者に対して適用される時給の最低額で、労働者・使用者の代表と有識者が集まり毎年目安額を決めています。現在の全国平均は930円ですが、労働者側が物価高を受け大幅に引き上げを求めていました。その一方で、原材料やエネルギー価格の高騰から使用者側は引き上げを小幅に抑えるよう訴え、最終的に31円の引き上げとなり、全国平均で961円とする目安でまとまったわけです」(経済ライター)
最低賃金は各都道府県の審議会でこの目安を参考に確定し、10月頃から適用されるが、《時給が上がること自体は嬉しいけど、扶養範囲で働くとなると結局は時間を短くするしかなくて、それが原因で雇う側は人員不足に悩まされることになる》《最低賃金の引き上げは雇い止めなどの副作用が起きる危険性もあるので、そんなことよりも扶養範囲をもっと何とかしてほしい》といった声が多く見られる。
「年間の給与収入が103万円未満であれば配偶者控除を受けられ、世帯主の所得税や復興特別所得税、住民税を抑えることができ、配偶者の住民税などもかかりません。また給与収入が130万円未満であれば世帯主の社会保険の扶養に入ることができ、社会保険料の支払いが免除されます。ですので、この範囲を出ない額の収入に抑えて働いている人も多く、最低賃金の引き上げによって増えた収入のぶん、休みを増やさなければならないケースも出てくるのです。手取りを増やすという意味では、まずは扶養に入る範囲を広げることの方が大事かもしれませんね」(前出・経済ライター)
岸田首相は物価高騰に対し「政府が責任を持って万全の対応をしていく」と語っているが、庶民にとっては現時点で「万全」にほど遠い状況だ。
(小林洋三)