現在のネコノミクス増大の契機となったのは、「岩合光昭の世界ネコ歩き」(NHK-BSプレミアム)だという。動物写真家の岩合氏が世界各地の猫を訪ね歩くドキュメンタリー番組だ。
「宮本名誉教授も、12年から放送開始された『この番組でテレビでの猫出演が増加し、写真集、グッズが爆発的に売れた』と指摘しています。結果、全国で猫カフェが増え、15年には猫関連グッズだけで約30億円市場に成長したというのです」(動物ライター)
このブームにイチ早く反応した書店が、「本の街」として知られる神田神保町にある。交差点付近に立つ姉川書店だ。またの名を猫専門書店「神保町にゃんこ堂」。その姉川二三夫店主がこう語る。
「10年ほど前、なんとかお客さんに立ち止まってほしくて、猫専門の棚を作ったのが始まりです。今では書籍と雑誌、写真集など猫関連本が700冊。猫雑貨も扱っています。大型店にはない猫本もありますから、休日には地方からのお客さんもお越しいただいて、ありがたいかぎりです」
大佛次郎、萩原朔太郎、内田百閒、村上春樹‥‥夏目漱石以外にも「吾輩は猫好きである」という作家は多く、書籍と猫の相性はバツグンらしい。
また、岩合氏のように、猫と出会うための旅も人気だという。コロナ禍で海外には行けなくとも、国内には無数の猫スポットがある。宮城・田代島、神奈川・城ヶ島や江の島、そして山口・祝島に大分・深島などなど。鎌倉市や尾道市、長崎市内などは「猫街」として、猫好きの間では有名なゾーンとなっている。
それにあやかり、「猫街」に変身中なのが東京・青梅市。青梅駅から都営バスに乗り1つめの停留所「住吉神社前」には「おうめ猫町一丁目」の看板が出ており、バスの待合室には「ニャショナルカラーテレビ」などのポスターが貼られている。さらに付近には「怪猫二十面相」「極道の猫たち」など、パロディ看板があちこちに掲げられていた。
「以前は古い町並みを生かし、『風と共に去りぬ』など懐かし名画の看板を掲げて、昭和レトロの街を観光の目玉にしてたんだ。この辺が猫の看板だらけになったのはここ数年のこと。街中に猫がいるわけじゃないんだけどね‥‥」(近隣の商店主)
果たして、にわかに日本経済の救世主を託された猫たちだが、犬じゃダメ?
「高齢化社会ですからね。犬の散歩に付き合える飼い主は減る一方。それに、人間に従順な犬とは違い、猫は気分屋。懐いたり懐かなかったりが魅力で、他の動物に代わりはいないでしょう」(姉川店主)
猫に小判。本来は金銭に無頓着なはずだが、猫たちの活躍で好景気が来るのなら、結構毛だらけ猫灰だらけなのである。
〈まだまだある!「ネコノミクス」効果〉
猫検定:初級、中級、上級の3種で猫好きを認定。オンライン検定の受付は3月13日が締め切り
猫手当て:IT企業「ファーレイ」では猫を飼う社員に毎月「猫手当て」を支給。猫同伴での出社も可
猫駅長:和歌山電鐵「貴志」駅長たま、会津鉄道「芦ノ牧温泉」らぶ駅長などアイドル並みの人気
猫通販:通販「フェリシモ」社内の猫好きが立ち上げた猫専用通販。売り上げ一部は保護猫基金に
猫3D巨大広告:昨年7月から新宿駅東口の街頭ビジョンに8メートル大の飛び出す三毛猫がにゃおーんと登場!
猫プラネタリウム:幻の星座「ねこ座」を旅する「猫星夜」はコニカミノルタプラネタリウムで開催中
猫バスツアー:名古屋・鯱バスでは猫スポット「龍泉寺」「招き猫ミュージアム」を巡るツアーを発売
猫御朱印帳:「日本全国ねこの御朱印&お守りめぐり」(学研プラス)では猫ゆかりの神社82を紹介
猫ジオラマ:大阪・天王寺「ジオラマ食堂てつどうかん」は鉄道模型に寝そべる猫を横目にランチ可
猫ふるさと納税:全国市町村で保護猫への寄付を受付。兵庫・上郡町は3000円以上で「ドド猫」グッズ返礼
*「週刊アサヒ芸能」3月17日号より