警察庁が公表している2021年度(1月~11月)の「自動車盗難」認知件数は4794件。年々減少傾向にあるという。とはいえ、これはあくまでも全体像の話である。特定の窃盗犯たちは、せっせと着実に犯行を積み重ねているようなのだ。さらに、盗難車の販売が日常茶飯事のごとく行われていることまで発覚した─。
人口の約20%が外国人という北関東の小さな町で、褐色のミゲル(仮名)と名乗る男と出会った。
「プリウスが欲しいの? 色は? 黄色? 白とかシルバーとか目立たないのがいい?」
さも、何でも用意できるというような口ぶりである。
「どんな車でも揃うよ。よそに倉庫もあるから。すぐ納車できるよ」
淀みなく勢いだけでまくしたてるトークには、おいそれとは信用できない、怪しげな響きがあった─。
きっかけは、近年増加している北関東における外国人犯罪に詳しい、ヤクザ組織の幹部X氏のつぶやきだった。
「盗難車を大っぴらに平気で売ってる中古車ショップがあるんだよ。『オークションより安いよ』って、相場の半額。元手がタダ同然なんだから、そりゃそうだろう。例えばプリウスなんか燃料食わないし、頑丈で人気がある。中古でも70~80万円はするだろうが、40万円を切るってな。しかも『今日はないけど、こういうのが欲しいって言ってくれればすぐ仕入れますよ』だって。盗んでくるって言ってるようなもんだろう」
この世に盗難車がある以上、よそさまの自動車を売り飛ばし換金している輩が存在していることは容易に想像がつく。とはいえ、それはあくまで闇ルートで売買されているものだとばかり思っていたのだが、
「もちろん、日本人の犯罪組織だったらきっちりやるわな。ただ盗んでくるだけじゃなく、話がついてるレッカー会社に盗んだのと同じボディの事故車を見に行って、廃車のナンバーと車検証を貰う〝ニコイチ〟だな。息のかかった板金屋できれいな車体ナンバーにも取り替える。手がかかってる分、より高く売るし、買ったほうも盗難車とわかってたって乗るわけだ。ブラジル人の商売では、盗んできた車のナンバーを〝テンプラ〟に取っ替えるだけだからな。調べられたらすぐ盗難車ってバレバレだよ」(X氏)
テンプラナンバーとは、無車検の乗用車に取り付けられた有効なナンバーのこと。有効なものばかりではなく、数字部分を偽造した登録されていない架空のナンバーもそうだ。いずれにせよ取り締まりの対象であり、高額の罰金が科せられる。
「テンプラナンバーだから、やつらは『すぐ乗れるよ』って売るわけだ。でも日本人みたいに精巧にナンバーを作るわけじゃないからな。パクッてきたナンバーの数字を切り取って4桁を3桁にしたり、数字を反対にしたり。あくまで金はかけないお粗末なもんだよ。それでも欲しがるやつらがいるってな。顧客の大半はベトナム人で、犯罪目的が多いよ」(X氏)
類が友を呼ぶ、多国籍犯罪ネットワークが形成されているとでもいうのか。それでも、大っぴらに営業されているという、その実態を確かめてみると‥‥。
*「週刊アサヒ芸能」1月20日号より。(2)につづく