1月9日、阪神の新人合同自主トレが始まった。矢野燿大監督の訓示を受け、ドライチルーキー・森木大智投手など7人の支配下新人と育成指名選手1名が鳴尾浜球場で汗を流した。
そんな“鳴尾浜球場のおなじみの光景”も、順調に行けば「あと3回」しか見られない。阪神は2025年2月の使用を目指し、兵庫県尼崎市に新2軍施設を新設するからだ。その新施設を指して、こんな指摘も聞かれた。
「総工費は100億円とも伝えられています。そんな大掛かりなファーム施設を造るのに、昨年のドラフトの育成指名は1人だけでした。ソフトバンク、巨人のように大量の育成選手を抱えた3軍組織を構築すると思われたのですが」(ベテラン記者)
昨季の阪神2軍はファーム日本一に輝いている。しかし、喜んでばかりいられる状況ではない。主力メンバーは、髙山俊、江越大賀など20代後半の野手ばかり。20代前半の対戦ピッチャーを打ち砕いてきたが、それがチームの未来につながるかと聞かれれば、必ずしもそうではないだろう。
「2025年は球団創設90周年のメモリアルでもあります。新2軍施設は阪神線・大物(だいもつ)駅から徒歩5分と立地もよく、メイン球場、サブ球場、ミニサブグラウンド、多目的グラウンド、室内練習場、選手寮もあります」(在阪記者)
現在の鳴尾浜球場施設内にある室内練習場だが、打撃ゲージと投球練習場で2レーンずつしかなく、手狭な感じだった。しかし、新球場ではそれぞれ6レーン設けられている。そんな充実した新施設ができるだけに、育成選手を1人しか指名しなかったのは、もったいない気がしないでもない。
「鳴尾浜球場は県立総合体育館、阪神高速5号湾岸線の高架橋に囲まれているため、拡充が不可能だったんです。施設の老朽化も指摘され、新球場への移設が決まったんですが、阪神経営陣の決断を後押ししたのは、掛布雅之氏です。彼が2軍監督を務めていたころに、ファンの入場を断る事態が連日のように続いていたのです」(球界関係者)
掛布氏の人気を再認識させられたという。また、2軍降格のまま引退を決意した有名選手のセレモニーにも大勢のファンが鳴尾浜球場に集まっていた。そんな熱心なファンに門前でお引き取りいただくのは申し訳ないと、球団は心苦しく思っていたそうだ。鳴尾浜球場の収容人数は500席、新球場は3600席を上回る。
ただ、新施設に見合う育成態勢の見直しはまだ発表されていない。
(スポーツライター・飯山満)