ホームランだけじゃない。奪三振、防御率、盗塁、打点、得点など〝チーム14冠〟が現実味を帯びるなど、リアル二刀流が本領を発揮している。「トリプル100」の偉業を達成し、注目度は高まるばかりだが、大スターに眉ツバもののフェイクニュースは付き物。現地で飛び出した「過熱報道」の真偽を検証すると─。
草葉の陰から見守る「野球の神様」さえも、目玉が飛び出るような活躍に違いない。
8月19日(日本時間、以下同)、エンゼルスの大谷翔平(27)がタイガース戦に「1番投手」で出場。投げては8回1失点8奪三振、打っては日本人初の大台となる40本目のホームランを放った。スポーツ紙デスクも〝リアル二刀流〟の真骨頂に舌を巻く。
「スライダーやスプリットなどの変化球はさることながら、150キロ中盤のストレートがストライクゾーンにバシバシ決まった。前回登板から取り組むテークバックの小さいフォームが功を奏して安定感を発揮。8回を四死球0の90球でまとめました。打っては、8回表に救援右腕のホセ・シスネロ(32)のド真ん中に失投したスライダーを弾丸ライナーで右翼席へ。自己最多の8勝目に華を添える〝祝砲〟となりました」
8回を投げた時点で、今季の投球回は100イニングに到達。クリア済みの100奪三振と100安打を含めると、投打にわたる「トリプル100」の偉業を達成した。これには大リーグ評論家の友成那智氏もアッケにとられて、
「1901年のアメリカンリーグ創設から初の快挙で、元祖二刀流のベーブ・ルースでさえも未踏の記録です。8月20日時点(以下、記録・数値は同日時点のもの)で、88をマークする打点数も3桁到達は時間の問題。しかも、ア・リーグトップとの差がわずか1打点で、打点王の射程圏内でもあります。独走状態のホームラン王だけでなく、初物づくしのタイトルなど、新記録ラッシュとなりそうです」
大躍進の21年シーズンも残すところ三十数試合のみ。危なげなく数字を積み重ねる先にはシーズンMVPの戴冠も濃厚となってくる。
「近年MVPの投票で重視されている『WAR』という選手の貢献度を示す数値で、断トツの結果を出しています。野球専門のデータサイト『FANGRAPHS』によれば、大谷は投手+打者で7.2。ア・リーグMVPを一騎打ちで争うウラジーミル・ゲレロJr.(22)の5.3を大きく引き離しています。例年7.0〜8.0の選手がMVPを獲得していますが、現段階で大谷以外に6.0を超える選手はいません。仮に、9月以降の試合をケガで全休しても抜かれることはないでしょう」(友成氏)
MVPが当確した「二刀流」の存在感は野球界だけに留まらない。
「全米一の発行部数を誇るスポーツ雑誌『スポーツ・イラストレイテッド』の『スポーツパーソン・オブ・ザ・イヤー』選出です。今年はNBAやアメフトなど米主要スポーツや、東京五輪で目をみはるスター選手が出てきませんでした。20年の大坂なおみの授賞に続く偉業ですよ」(友成氏)
このままだと、オフにも全米で大谷旋風が巻き起こることになる─。
*「週刊アサヒ芸能」9月2日号より。(2)につづく