仕事に活かせて自慢もできる「渋沢栄一『論語と算盤』検定」とは?

 生涯で約500もの会社設立や経営に関わり、「日本資本主義の父」と称された渋沢栄一(1840年~1931年)。その経営哲学は「論語と算盤」という談話録にまとめられました。

 1916年に刊行された同書は、今も多くのビジネスパーソンに読み継がれています。まだ読んでいないという方は、今回ご紹介する「渋沢栄一『論語と算盤』検定」をきっかけに、一度手に取ってはいかがでしょうか。

 それでは例題を見てみましょう。

〈問1〉「論語と算盤」は渋沢栄一の講演内容を抜粋して書籍化されたものですが、第1章のタイトルは次のうちどれ? 【1】理想と迷
信、【2】処世と信条、【3】成敗と運命、【4】人格と修養

〈問2〉渋沢は、人が社会で生きていくためには「常識」が不可欠であり、その常識とは智、情、( )の3つのバランスからなるものだと説きました。( )に入る漢字は【1】友、【2】美、【3】力、【4】意のうちどれ?

 実際の試験でも四肢択一式で出題されます。例題の答えは〈問1〉が【2】、〈問2〉が【4】。問2について補足すると、それぞれの意味は智(知恵)、情(情愛)、意(意志)となっています。

 今年3月には、11年前に刊行された「現代語訳 論語と算盤」(ちくま新書)の発行部数が50万部を突破したことが報じられました。現代のビジネスパーソンに受け入れられる理由はどこにあるのでしょうか。

 渋沢は人々が幸福になるためには富や競争が不可欠である一方で、拝金主義に歯止めをかける枠組みが必要だとも考えていました。そのために着目したのが、孔子の「論語」だと言われています。

 渋沢の解釈では、孔子が説いたのは「経済や実業は〝道徳〟を根幹として成り立つべきもの」であるということ。孔子が定義する「富」とは、賎しく卑怯な手を使ってではなく「正しい方法で得た富」を指していました。

 それを踏まえた上で、渋沢は「論語と算盤」の中で正しい実業のあり方について以下のように考えを示しています。

 たとえば、一個人だけが大富豪になって、社会の多数が貧困に陥るようなビジネスモデルは幸福には繫がらないこと。

 正真正銘の商売を行っている会社には、後ろめたい機密などは存在しないこと。

 また、資本家と労働者は〝思いやり〟の関係で結ばれるべきであること。

 こうした渋沢の考えは、経営者だけでなく、一般サラリーマンでも応用できると思います。

 また、「論語と算盤」では、「趣味」の重要性についても触れています。ただ上司の命令に従って決まりきったタスクを処理するのではなく、そこに「趣味」を持たせることで、「こうしたい。ああしたい」と、理想を胸に実行できるようになると述べています。

 100年経っても色褪せない渋沢の言葉は、働くすべての人にとってカンフル剤となるでしょう。

儲かる指数:78

鈴木秀明(すずきひであき)/81年生まれ。東京大学理学部、東京大学公共政策大学院を経て資格アドバイザーに。取得資格数は約700。

マネー