盗塁王13回、シーズン歴代最多となる106盗塁、通算盗塁数1065と輝かしい記録で「世界の福本」と呼ばれた球界のレジェンド・福本豊が日本球界にズバッと物申す!
ほんまに今年こそ頑張らな、ファンの心も折れてしまう。2年連続最下位のオリックス。ここ数年は僕も春季キャンプの臨時コーチとして招かれてたけど、コロナ禍の今年は、自宅でキャンプ中継を見ていただけ。それでも若手の成長を感じることができた。若い勢いで、負け慣れてしまったチームを活性化してほしい。
特に楽しみなのが、19年ドラフト2位の高卒2年目、紅林弘太郎。静岡県立駿河総合高出身で甲子園出場はなかったけど、大型遊撃手として球団の期待は最初から高かった。2月23日のロッテとの練習試合では2打席連続の3ランを放つなど実戦でアピールを続けている。体も大きくなって、たくましくなった。
紅林は昨年終盤に1軍を経験させてもらってヒットも打っている。今年はショートの開幕スタメンをつかみ取る気持ちでやってほしいな。18年のドラフト1位で高卒3年目の太田も、今年こそ三塁のレギュラーをつかまなアカン。紅林とフレッシュな三遊間で開幕を迎えれば、ファンの夢が広がる。太田は1年目、2年目と大事なところでケガをした。チャンスはいつも転がってるわけやない。しっかりつかんで放さないようにしないといけない。
自分では若いと思っていても、プロの世界ではすぐに旬の時期は過ぎてしまう。例えば阪神の髙山がそう。1年目に新人王を取って主力に定着するかと思ったら、2年目にこけた。巻き返しを狙った3年目も開幕スタメンで出たけど、打率1割台の大不振。そうなるとチャンスは少なくなる。4年目はルーキーの近本に外野のスタメンを奪われ、6年目の今年は佐藤輝の加入でますます苦しい立場に立たされている。オープンスタンスに変えた新フォームで練習試合では打ちまくっているけど、開幕スタメンは回ってきそうにない。
若い選手にはよく「毎年1年目のサラが入ってくるんやぞ」とカツを入れているけど、危機感を持てない選手が多い。戦力外を通告されて焦ってからでは遅い。チャンスをもらえているうちに死にもの狂いでモノにしないと、それすら回ってこなくなる。だから紅林、太田も「今年しかない」というぐらいの気持ちで、レギュラーを目指さないとアカン。三塁はケガで出遅れている育成出身の大下や中川も狙っている。誰が抜け出すか注目したい。
若手の底上げで戦力アップすれば、オリックスは十分に戦えるチームになる。投手は山本、山岡とリーグを代表する先発2本柱を擁し、野手も吉田正尚という昨季の首位打者がいる。投打の柱がしっかりしているから、普通に戦ったら最下位になるチームではない。それと、今年はジョーンズにも期待したい。メジャー通算1939安打、282本塁打の実績をひっさげての入団で、1年目は打率2割5分8厘、12本塁打と期待外れに終わった。日本の野球をなめてた部分もあったけど、投手の質の高さに驚いたはず。昨年は体の締まりもなかったが、今年のキャンプにはシェイプアップして参加していた。楽天で24本塁打のロメロも復帰するし、本物のジョーンズを見せれば、強力なクリーンアップを組める。
僕の現役時代は1度も最下位を経験していないけど、オリックスはこの20年で最下位が9度も。優勝どころか、Aクラスが2回しかない。そろそろ、お荷物球団から卒業してほしい。
福本豊(ふくもと・ゆたか):1968年に阪急に入団し、通算2543安打、1065盗塁。引退後はオリックスと阪神で打撃コーチ、2軍監督などを歴任。2002年、野球殿堂入り。現在はサンテレビ、ABCラジオ、スポーツ報知で解説。