荒汐部屋で12人の力士クラスターが発生するや、初場所を前に大横綱のコロナ感染も判明。頭を失ったも同然のモンゴル勢を尻目に、ニューリーダーが綱取りにリーチをかけるか。角界の地殻変動が始まった。
「この年末年始も角界はコロナに振り回されっぱなしですよ‥‥」
と疲労感のにじむ表情を浮かべるのは、さる角界関係者だ。1月10日に初日を迎えた大相撲初場所は、開催前から予断を許さない状況が続いていた。
「大みそかに荒汐部屋の若隆景(26)のコロナ感染が判明。元日には、荒汐親方を含む11人のクラスター発生が追加で確認されて、角界周辺は一気に慌ただしくなりました。一方で、20年度の収支決算が55億円の大赤字を見込んでいる相撲協会としては、緊急事態が発令されようが、約5000人を上限に、観客を入れた本場所開催の方針を曲げるわけにはいきません。5日には、横綱・白鵬(35)の感染も発表。昨年同様に難しい舵取りを迫られましたが、1場所5億円の放映権料と入場料収入のために、中止の判断は下せなかったようです」(角界関係者)
3日に嗅覚異常、4日にPCR検査を受けて感染が確認された白鵬は、3場所ぶりの本場所復帰が断たれたことになる。昨年12月には、相撲教習所で行われた合同稽古で復調ぶりをアピールしていただけに、看板力士の休場を惜しむ声は多い。スポーツ紙デスクによれば、
「三番稽古で大関・貴景勝(24)に15番中13勝、同じく大関・朝乃山(26)に20番中17勝するほど状態が上向いていた。技術は腐っていないし、土俵際でクルッと回る反射神経も健在。3場所休んだことで、右膝の療養もできた。昨年の11月場所後に横綱審議委員会から史上初の『注意』の決議を下されましたが、さらに1場所休む大義名分ができ、次場所でさらに万全の相撲を取ることができるようになったと思います」
くしくも引退の先延ばしに成功した白鵬とは対照的に、背水の陣に追い込まれたのが、4場所連続休場となった横綱・鶴竜(35)である。白鵬同様、横審から「注意」の決議を下されたが、
「『腰椎すべり症』のバクダンが芳しくないのか、ロクな稽古ができていませんでした。合同稽古にも参加していましたが、ぶつかり稽古で胸を出すことはあっても、実戦形式の相撲は一切取らなかった。黙々とシコやすり足、テッポウに励むばかりで、関係者たちに『何しに来たんだ』と嘲笑されていました」(スポーツ紙デスク)
もちろん、他人の相撲を見て分析する「見取稽古」も稽古の一つ。だが、ベテラン横綱の調整が万全でないのは、誰が見ても明らかだった。以前なら、大相撲の一大勢力として君臨していた「モンゴル互助会」の下支えでごまかせたかもしれないが‥‥。
角界関係者がモンゴル勢を巡る衰退の見取り図を解説する。
「17年の日馬富士引退後も、一部のモンゴル人や欧州出身力士を中心に怪しい動きが見られたとも言われている。ただし、現在は影響力を失っているに等しい。そもそも組織の中心を担っていたモンゴル人力士が、幕内では少数派で、リーダー格の横綱も休場が多い。結局、星勘定ができる“同志”が減って、互助会は機能不全に陥ってしまいました」
最近は同じモンゴル人力士であっても、互助会入りを断るケースもままあるという。満身創痍の両横綱の引退時期が迫る中、いよいよ互助会の完全崩壊が進行しているのだ。
もはや徳俵まで追い詰められた一派に追い打ちをかけるのは、近年の角界を席巻する学生相撲出身者たちである。
「幕内に限らず、十両にも埼玉栄高校や日本大学、東洋大学出身者が年々増えています。彼らは指導者から『八百長だけは絶対するな』と口酸っぱく教わってきた。スネに傷のある力士は、引退後に相撲界に残りづらくなりますからね。今や学生相撲出身者ばかりの相撲界となり、まさにガチンコ相撲の最盛期を迎えています」(相撲ライター)
初場所は最後まで目が離せそうにない。