今期の最終損益が過去最悪の5100億円の赤字となる見通しであることを明かしたANA。一方のJALも2700億円と再上場を果たした2012年以来の赤字となることを発表した。
国内大手2社で7800億円。世界の航空会社が加盟する国際航空運送協会(IATA)は、今期の航空業界の損益が約9兆円にのぼると予測。すでにタイ国際航空をはじめ、豪州シェア2位のヴァージン・オーストラリア、南米大手のLATAM航空、英国の国内線シェア最大手のフライビーなどが経営破綻を起こしている。
特にANAはここ数年、海外の就航都市を増やし、ハワイ便では総2階建ての超大型旅客機A380を投入するなど国際線に力を入れていたが、結果的にそれが巨額損失を招く要因のひとつになってしまった。業界内外では「現地で直接会うよりもオンライン会議にシフトしており、ビジネス客の出張需要は今後も戻ることはない」というのが大方の見方だ。
ANAも傘下のLCCピーチ・アビエーションに加えて、既存のグループ会社エアージャパンを活用して中距離国際線を中心とする新たなLCCを新設することが決定。生き残りをかけた改革に迫られているが、コロナはまだ収束の気配がなく、先行きは依然不透明な状況だ。
そんな中、まことしやかに囁かれているのがJALとANAの合併説。ネット上では“JANA”などと呼ばれているが、現時点では両社ともに否定している。あくまで噂レベルの話だが、「双方に資金提供を行うのは金融機関にとっても大きな負担。合併を検討する声が出て当然」とは航空業界に詳しい経済アナリスト。
「航空業界は昔から統廃合が頻繁に行われてきました。忘れている人も多いかもしれませんが、日本もかつてはJAS(日本エアシステム)を加えた大手3社でしたがJALと2002年に経営統合しています。このときは当時の運輸省の意向が大きく影響しており、今回も政府内で合併の声が上がった場合、統合に向けて一気に舵を切る可能性は十分にあると思います」
航空会社と金融機関、政府というキーワードからドラマ「半沢直樹2」を連想する人は多いと思うが、今後内部であのようなやりとりが繰り広げられるのだろうか。もしくはすでに行われているのかもしれない。
(高島昌俊)