盗塁王13回、シーズン歴代最多となる106盗塁、通算盗塁数1065と輝かしい記録で「世界の福本」と呼ばれた球界のレジェンド・福本豊が日本球界にズバッと物申す!
オリックスが8月20日に西村監督を事実上、解任した。西武戦で4連敗を喫して、借金17となった試合後に球団が辞任を要請した。昨年の最下位から巻き返しが期待されながら開幕からつまずき、今年も遅かれ早かれ、動きはあるやろなと思ってはいた。だけど2000年以降、オリックスのシーズン途中の監督交代は、休養を含めて5度目のこと。こんなチームは他にないし、OBとしても恥ずかしい。
それでも中嶋2軍監督が監督代行になり、いきなり3連勝を飾った。とりあえずのカンフル剤としては効果があった。今までは調子がよくても1軍から声がかからなかった杉本ら、チャンスをもらった選手が発奮している。僕から見ても、これまで「なんで上で使わんのかな」と思うことがよくあった。これで1、2軍の風通しはよくなると思う。
阪急OBとして、中嶋にはチーム再建を期待している。現役時代は2年間一緒にやり、引退翌年の打撃コーチ時代には、強化指定選手として指導した。ウエさん(当時の上田利治監督)がゾッコンやった。サメという愛称で、ウエさんから「サメとデカ(高橋智)をレギュラーで使いたいから、打てるようにしてくれ」と頼まれた。他の選手からねたまれるぐらい練習させたけど、故障もせずによくバットを振り込んだ。
でも、中嶋もオリックスを立て直すのは容易ではないことを承知しているはずや。はびこる「病」は重症やから。ショック療法で一時的には勝てるかもしれんけど、そんな甘いものではない。96年を最後に12球団で最もリーグ優勝から遠ざかり、この20年間でBクラスが18回。選手が勝つ喜びを知らんし、負け慣れてしまっている。これが最もやっかいや。主力選手も個人成績さえ残せば今の時代は給料は上がるから、チームの勝利に固執していない感じがする。「やっぱり今年もアカンかったな」でサバサバしてて、本気で悔しがっていると思えない。
染みついてしまった負け犬根性を払拭するには、やっぱり厳しい練習をするしかない。僕らの頃は「これだけ練習したのに負けたら腹が立つ」と思っていつも戦っていた。それもリーグ優勝は通過点で、日本シリーズで巨人に勝つことを目標にキャンプから猛練習を行った。流した汗の量が勝利への執念につながった。
今のオリックスは山岡、山本、田嶋の先発3本柱は12球団でも屈指の力を持っているのに、好投していても援護がなく負けることが多い。これこそチーム全体に勝利への執念が足らんからや。昔の話ばかりするのは申し訳ないけど、僕らはエースの山田久志が投げてる試合は「絶対に勝たないとアカン」と思って戦っていた。
後半戦は意地を見せてほしいが、本格的なチーム再建は秋季練習からになる。僕も臨時コーチとして手伝ってるけど、春季キャンプの練習を見ていても、ピリピリしたムードが感じられない。アップの段階から少なすぎる。同じ宮崎でキャンプを張ってるソフトバンクのほうが質も量も上。柳田や松田らが、いつになったら帰るんやというぐらい遅くまで練習している。日本一のチームに勝つにはそれ以上にやらなアカンのやから、相当な覚悟がいる。中嶋が来季から正式な監督になるかは決まってないけど、次の新監督は鬼になって鍛え直してほしい。
福本豊(ふくもと・ゆたか):1968年に阪急に入団し、通算2543安打、1065盗塁。引退後はオリックスと阪神で打撃コーチ、2軍監督などを歴任。2002年、野球殿堂入り。現在はサンテレビ、ABCラジオ、スポーツ報知で解説。