北朝鮮の“新女帝”金与正の素顔「トランプ大統領と渡り合うマルチリンガル」

 北朝鮮が再び動き出した。表舞台に出る機会が減った兄・金正恩委員長に代わって、最前線で指揮をするのは、「ほほえみ外交」で知られた“新女帝”金与正氏だ。かつての「クールビューティ」は鳴りを潜め、韓国との連絡事務所を爆破して、その冷徹ぶりを世界に示した。

 その注目度の高さとは裏腹に、これまで与正氏の結婚や子供の有無などについては一切、公式的に報じられたことがない。

「もっぱら韓国国内の情報ですが、すでに結婚して二児の母と言われています。夫の情報は明らかになっていません。正恩氏の側近だった崔竜海氏の次男や庶民出身の軍幹部、果ては金日成総合大学時代の同級生の大学教授まで、3人の『夫候補』が存在します。15年に左手薬指に金の指輪をしていたことから、結婚していると一般的には思われています」(外信部記者)

 出産についてもなにかと謎がつきまとう。一部では19年2月に米朝首脳会談の第二次会談が決裂した直後には、与正氏が公の場から姿を消して「更迭説」が取り沙汰されたことがあった。しかし、最近になって、18年4月の南北首脳会談以前に出産していたとの証言もあるなど、諸説入り乱れているのだ。

「そもそも、北朝鮮国内では、与正氏が金正恩氏の妹であるということすら正式に認めたことはない。しかし、ここにきて、正恩氏の傍らにぴったりと張りついている。それほど政権内での地位は上がっていると考えられます。一部で女性蔑視の風潮が強い朝鮮半島では、与正氏のトップはないとの意見もありましたが、軍部との連携も今年2月頃から取っているようで、実態的にはすでに金正恩氏の代役を務めた形になっています」(外信部記者)

 だが、すでに彼女は、北朝鮮の将来を左右する重責を担っているだけに、家族どころの話ではないのも事実。

 さらには現在、没交渉となっているアメリカのトランプ大統領との「橋渡し役」としての役割も期待されているというのだ。

「与正氏は英語が堪能なことから、米朝会談でも言葉少ない兄に代わって積極的にトランプ大統領と挨拶を交わすなど、国際派ぶりをアピールしていた。正恩氏と同様、海外留学の経験もあり、英語、ドイツ語、フランス語を流暢に話せるマルチリンガルです。スイスに留学当時の兄妹同士の会話は英語だったほど語学には堪能だとか。今でもiPhoneを駆使して、中国経由で海外の一次ソースを原文で読み解き、国際情勢について情報収集しているようです」(外信部記者)

 トランプ大統領は今年に選挙を控えているものの、コロナウイルスでの対応や白人警官による黒人殺害事件を巡る発言などで、逆風の真っただ中。それだけに、国内世論の目をそらすためにも「中国カード」や「北朝鮮カード」で外交アピールを狙うという思惑とも合致する。

「ここにきて、正恩委員長の健康不安についてもトランプ大統領は明言を避けて気遣いをしている、仮に米朝関係が前進する際には与正氏の存在が欠かせないだけに、彼女のナンバー2就任は歓迎する意向です」(国際ジャーナリスト)

 韓国に対して「鉄仮面」よろしく冷酷な一面を見せつけた与正氏。かつては、対外宣伝部に所属し、プロパガンダを担当してきたとはいえ、いまだビラを用いて抗議を示すスタイルが時代錯誤そのものに映るが……。

「『目には目を』の考え方があるとはいえ、SNS全盛の時代に取る手法とは思えません。抗議の仕方がアナログすぎて、世界的にも失笑を買っていますよ」(東京新聞編集委員・五味洋治氏)

 最新のスマホを駆使する国際派リーダーか、時代遅れの独裁者か。突如、豹変した北朝鮮「ナンバー2」の動向を注視する必要がある。

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