凶暴化の原因はコロナ禍の観光客激減!? 世界で相次ぐ「殺人ザル」被害報告

「250人以上を死傷させたアルコール中毒のサルに『終身刑』を宣告される!」

 インドの報道機関「IANS」が、こんな衝撃的なタイトルで仰天ニュースを伝えたのは、6月中旬のこと。『カルア』と名付けられたそのサルは、もともとインドのウッタル・プラデーシュ州ミルザプール地区でペットとして飼われていたが、飼い主から毎日強い酒を与えられていたため、その飼い主が死去した後、禁断症状のせいか、狂ったように人間を襲うようになったという。

 報道によれば、カルアがターゲットにしたのは女性や子供を中心に約250人。一部の被害者は鋭い牙で顔を引き裂かれ、うち男性1人が、かみ傷が原因で死亡したと伝えられる。その後カルアは、地元森林局と動物園のチームにより捕獲され、動物園に運び込まれたが、凶暴性が改善しないことから、当局はカルアが死ぬまでケージの中で飼育することを決定。「IANS」の取材に対し、動物園の獣医師は「カルアがここに来てから3年がたちますが、以前と同じように攻撃的です。もし自由になれば人々に被害を与えることが明らかなため、生涯飼育下に置かれることが決定されました」と説明。このニュースが世界中を駆け抜けることになった。

 むろん、この殺人ザルのケースは極端な事例だが、ここ数年世界各地で”暴走サル”による被害が頻発していることは事実。野生動物の事例に詳しいジャーナリストによると、「2016年にはブラジル北東部のパライバ州にあるバーにサルが現れ、スタッフの目を盗んでラム酒を飲み干したあと、酔っ払ってバーにあった刃渡り30センチの出刃包丁を手に大暴れしたという事件がありました。サルは男性客を執拗に追い回したあと、屋根の上に登り、包丁で屋根をブスブスと刺し、結果、現地の消防隊員に捕獲されました」とのこと。

 また、2018年にはインドで民家の玄関から侵入したサルが、授乳中の乳児を母親から奪い去り、顔と首に致命的な怪我を負わせた後、近隣の屋根の上に放置したという事件もあり、「乳児はすぐに病院に搬送されたそうですが、間もなく死亡が確認されたそうです」(前出・ジャーナリスト)

 日本でもかつて静岡県裾野市や三島市などに、ニホンザルとみられる凶暴なサルが出没。1週間で負傷者が50人を超えたという事件があったが、

「ここ数年は長野県の地獄谷温泉付近や志賀高原スキー場での”サル害”が話題になっていますが、原因はインバウンドによる外人観光客の餌やりです。サルは学習能力が極めて高く、おいしいエサの場所や怖くない人を覚えていくことに長けている。また、サルの視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚は人間とほぼ同じで、目で見て情報を集め、人に慣れると大胆不敵になるため、よりおいしい食べ物を求めるのは当然のこと。コロナ禍の影響で各地ともに観光客が減り、おいしい食べ物にありつけなくなった不満が、何かをきっかけにスイッチが入り、凶暴化に繋がっていると指摘する専門家もいます」(前出・ジャーナリスト)

 今年3月にはタイの現地メディア「バンコクタイムス」(電子版)が、ロッブリーという観光地に100匹を超えるサルの大群が現れ、国道を縦横無尽に走り回って大暴れするという衝撃的な映像をアップして話題になったばかり。

 事情やルールを知らない観光客の餌やりがサルの”食”を支え、それが失われたことが昨今の凶暴化につながっているということは、日本に「殺人サル」が出現する可能性はゼロではないかもしれない。

(灯倫太郎)

ライフ