世界の福本豊〈プロ野球“足攻爆談!”〉「飛ぶボールがカギを握るかも」

 盗塁王13回、シーズン歴代最多となる106盗塁、通算盗塁数1065と輝かしい記録で「世界の福本」と呼ばれた球界のレジェンド・福本豊が日本球界にズバッと物申す!

 待ちに待ったプロ野球が開幕した。当面は無観客での開催となるけど、選手は元気はつらつとしたプレーでテレビ観戦のファンを喜ばせてほしい。先日も喫茶店に入ると、おばちゃんが大きな声でタイガースの話をしていた。勝った負けたの話題で盛り上がれる日常がうれしい。前回のリーグ優勝が2005年。熱狂的なファンをそろそろ喜ばせたらなアカン。今年は大いにチャンスがあるとみている。新聞やテレビの開幕直前の順位予想でも、僕としては最近では珍しく阪神の優勝を推した。

 新型コロナウイルスの影響で3カ月遅れの異例のシーズンは、オールスター、交流戦が中止となって、120試合をノンストップで戦う。いろいろ特別ルールが定められたけど、阪神にとってはプラスになることが多い。とにかく、今年大事なのはスタートダッシュを決めること。

 セ・リーグは日程の都合でクライマックスシリーズを行わない。シーズン中盤以降、はやばやと優勝を諦めて、来季を見据えた戦いに切り替えるチームも出てくる。そうなると、優勝争いをしているチームは下位相手に取りこぼしが少なくなる。それに球宴休みもないため、シーズン序盤に波に乗り損ねると、切り替えが難しい。だから矢野監督は「先行逃げ切り」を強く意識したタクトを振ってほしい。

 開幕ダッシュの武器となるのが、12球団でも屈指の層の厚さを誇るリリーフ投手。今年は延長戦が10回までで打ち切りとなるから、先発を5回ぐらいで早々に降ろして、中継ぎ投手を小刻みに投入できる。逆転CS進出を決めた昨季の終盤は、そういう戦い方で白星を重ねた実績もある。スタミナ切れすれば、どんどん1、2軍で入れ替えすればいい。外国人枠が5人に増えることで、エドワーズ、スアレスの2人を1軍で使えるのも大きいし、ドラフト6位ルーキーの小川も投げっぷりがいい。他球団が羨むほど1軍レベルのリリーフ投手をたくさん抱えている。

 それと、これは僕の感覚的なものやけど、今年は練習試合でやけにボール自体が飛んでいる気がする。阪神は6月の11試合で10本のアーチを放った。ボーアの3試合連発があったとはいえ、昨季は143試合でチーム全体で94本塁打だった。このことを考えると、ちょっとホームランが出すぎている。

 阪神に限らず、テレビ中継を見ていても「えっ、今のが入るのか」と驚くことが少なくなかった。詰まったり、こすったりした打球もフェンスを越える。この「飛ぶボール」が公式戦でも続けば、相手のホームランも増えるけど、今まで貧打に泣かされることの多かったタイガースにとってはプラス材料になる。目立たないけど、若手野手も成長している。近本、木浪、北條、大山、高山ら年代の近い選手らが切磋琢磨すれば、チームに勢いが出てくる。

 2位以下の予想は巨人、DeNA、広島、中日、ヤクルトの順番。巨人は坂本、丸、岡本を擁する打線に安定感があるし、6連戦が続く過密日程では、本拠地がドーム球場であることも有利。ただ、先発、リリーフともに駒不足とみている。打線の破壊力自体はDeNAが一番。練習試合で絶好調の新外国人のオースティンとソト、ロペスの助っ人3人で打ちまくれば、優勝の目も出てくるはずや。

福本豊(ふくもと・ゆたか):1968年に阪急に入団し、通算2543安打、1065盗塁。引退後はオリックスと阪神で打撃コーチ、2軍監督などを歴任。2002年、野球殿堂入り。現在はサンテレビ、ABCラジオ、スポーツ報知で解説。

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