「エール」鉄男役でブレイク、中村蒼の“役者魂”に綾瀬はるかとの共通項

 窪田正孝主演のNHK朝ドラ「エール」が20%以上の高視聴率をキープし続けている。ドラマの人気を牽引している役者の一人が中村蒼だ。主人公の作曲家・古山裕一の幼馴染である村野鉄男を演じ、山崎育三郎が演じる歌手の佐藤久志とともに、「福島三羽ガラス」として、今後も物語の重要な役割を担っていく。

「中村演じる鉄男は、小さい頃はガキ大将としてならし、貧しい青年期を経て新聞記者になったものの、昔からの夢があきらめきれずにプロの作詞家を目指すという役どころ。本来なら媚を売るべきレコード会社のディレクターに詞と故郷の福島をバカにされると、『福島ばかにしてんのが!』と激高するシーンに代表されるように、純朴で熱いキャラクターは多くの視聴者の関心を集めています」(テレビ誌ライター)

 鉄男というキャラクターと同様、中村蒼という俳優は単なるイケメンという枠にはおさまらない。すでに熱心なファンもいたにはいたが、ここまで全国区のブレイクを果たすまでに、長い下積み時代を送ってきたという。ドラマ解説者の木村隆志氏が中村の“役者魂”について語る。

「ドラマで主演デビューを果たしたのは2005年放送の『BOYSエステ』(テレビ東京系)。同作でイケメンの男性エステティシャンを演じたように、ベビーフェイスのヤサ男キャラが定着して、学園ドラマではメインの生徒役に抜擢されることもありました。演技の幅が広がったのは、2012年の『息もできない夏』(フジテレビ系)。このドラマで中村はまともに義務教育も受けていない、影のある無戸籍の青年を好演し、同年の堺雅人主演の『リーガル・ハイ』第1話では、殺人犯に仕立て上げられた若者役に抜擢。裁判では最終的に無罪を勝ち取ったものの、『じつは本当は犯人だったんじゃないか』と視聴者に疑問を投げかけるような後味の悪さを感じさせました」 

 二番手三番手、もしくは脇役を演じる機会が増えていったが、インパクトある“怪演”で主演の有名俳優にも劣らない存在感を発揮しはじめる。

「極めつけは2015年の『無痛〜診える眼〜』。中村は先天性無痛症で無毛症という清掃員男性イバラを演じていますが、『エール』の鉄男役でファンになったという女性視聴者が、この剃髪した姿を見たらかなりショックを受けるかもしれません。眉毛まで剃った姿にはそれほどのインパクトがありました。ドラマのラストでは伊藤英明演じる医師への殺意をむき出しにして無理心中を図るようなシーンが印象的でしたが、その頃から主役を“食う”ような個性派として注目されはじめました。なお、この作品では、浜辺美波の金髪姿も拝めることもあって、ドラマファンの間でも語り草の作品となっています」(前出・木村氏)

 役作りのためならスキンヘッドも“眉剃り”もいとわない。これまで役作りのために坊主頭にした俳優といえば、映画「ピンポン」の中村獅童、ミュージカル「王様と私」の渡辺謙、2004年放送のドラマ「世界の中心で、愛をさけぶ」で白血病患者を演じた綾瀬はるかといった面々が思い起こされる。

 余談だが、中村はネットフリックスなどで今もネット配信されている連続ドラマ「夫のちんぽが入らない」では、そのタイトル通り、なかなか妻との“夜の営み”が完遂できず、やがて性産業の店にハマっていくという教師の夫を演じている。スキンヘッド男から巨チン夫まで、幅広い役を演じた経験値が、「エール」での主役級の輝きに結びついているのかもしれない。

(編集部)

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