盗塁王13回、シーズン歴代最多となる106盗塁、通算盗塁数1065と輝かしい記録で「世界の福本」と呼ばれた球界のレジェンド・福本豊が日本球界にズバッと物申す!
いったい何を考えてるねん。阪神の藤浪が5月28日の朝の甲子園練習に遅刻して、2軍降格となった。ただの寝坊なのか、理由があるのかは知らんけど、タイミングが悪すぎる。優しい矢野監督が怒るのも無理はない。「信頼を失う」と言ってたけど、ほんまにそのとおり。他の選手にしても、一緒にやってられんとなるからね。
遅刻なんてもってのほかで、本当ならいつも一番に球場に来ないといかん立場やったはず。3月26日に球界で初めて、新型コロナウイルス感染者となり、チームはそこから活動休止となった。一般人を含めての会食が感染源として疑われて、世間からの風当たりも強かった。自主練習を再開する前には「深く反省しています。プレーで取り返すしかない」と頭を下げていたけど、ほんまに反省していたのか、と言いたくなる。
選手らは制限がある中で自主練習を続けていて、集合練習ができるようになったばかりやった。藤浪自身も5月24日のシート打撃で4者連続三振を奪って、各スポーツ紙も好意的に大きく報道してくれた。僕も前を向いて進んでくれたらいいなと応援していた。昨年は0勝と苦しんだけど、入院や自粛期間が自分を見つめ直すいい時間になることを期待していた。
プロ野球選手の遅刻自体はなにも珍しいことではない。僕も何度か遅れたことがある。集合時間を間違えたり、交通渋滞に巻き込まれることもある。危ないのは、ほとんどの選手が自家用車で通っているから、遅れそうになると、焦って運転が荒くなりがちなこと。だから、僕らの現役時代も「事故につながる可能性もあるんやから、時間には余裕を持って来るように」と指導されていた。それでも遅刻する者がいたし、罰金制度を導入する球団も多い。矢野監督は「今回が初めてではない」と明かしていたし、遅刻癖があるのを藤浪本人もわかっていたはず。目覚ましを何個もかけて、意地でも早く行かなアカンかった。
2軍落ちというのは、何百万円の罰金よりも痛い。プロ野球は1軍で投げてなんぼなんやから、稼げるチャンスを奪われたということや。いつになったら上に呼んでもらえるかわからんけど、ファームで結果を出し続けるしかない。成績だけでなく、練習態度から示していく必要がある。常に一番に球場に入るぐらいにして「あいつ変わったな」とみんなに認めてもらえるようにならなアカン。今度こそ生まれ変わった姿を見せてほしい。本来なら阪神だけでなく、日本球界のエースになれるような器なんやから。
プロ野球は6月19日の開幕目指して、2日から練習試合を再開したけど、3日には巨人から新型コロナの感染者が出たことが発表されて騒動になった。大事には至らんかったみたいやけど、ほんまに無事に試合ができるんやろかという心配はずっと付きまとう。最低でも、開幕前には他チームの選手も全員が検査を受けたほうがいい。
野球のないネタ枯れ期間は、もう懲り懲り。先日も若い頃に風呂場で撮影されたバスタオル一枚の裸の写真が某スポーツ紙に断りもなく掲載された。「ユタカ100%」って見出しも、どうやねん。悔しかったから、もっとカッコいい水着の写真を自分のインスタにポストした。早く球音を当たり前に楽しめる日常が戻ってほしいもんやで。
福本豊(ふくもと・ゆたか):1968年に阪急に入団し、通算2543安打、1065盗塁。引退後はオリックスと阪神で打撃コーチ、2軍監督などを歴任。2002年、野球殿堂入り。現在はサンテレビ、ABCラジオ、スポーツ報知で解説。