A 先ほどE先生とD先生が暴露したように、延命効果があるとされるエビデンスも、実は薬屋が作り上げたものだからね。医師たちがそれを信用しているかいないかは、医師自身が治療を受ける側に回った場合の対応でわかる。実際、多くの医師は「ガンが治らないとわかったら、自分は抗ガン剤治療を受けない」と断言している。要するに医師たちは、自分が受けたくない治療、あるいは身内には絶対に受けさせたくない治療であるにもかかわらず、アカの他人である患者には、延命名目の抗ガン剤治療をせっせと行っているというわけだ。
─18年のノーベル医学生理学賞受賞で脚光を浴びた免疫チェックポイント阻害薬(商品名=オプジーボなど)はどうですか。新たなガン治療薬として注目されていますが。
D ごく一部の患者には効きますが、多くの患者は副作用を被るだけ。しかも、ずっと効き続けるわけではなく、かつ、毒性も確実に蓄積されていく。したがって、本質的には「抗ガン剤と五十歩百歩」とみておくのが妥当でしょう。いずれにせよ、使える薬がなくなれば、患者を緩和ケアに放り出して、「治療すごろく」は上がりとなります。
─それにしても、手術にしろ、再発予防のための抗ガン剤治療にしろ、延命のための抗ガン剤治療にしろ、医師たちはかくも強引に患者を治療に引きずり込もうとするんですね。
A そりゃ、第一にあるのは出世と保身だよ。医師たちは病院の経営幹部らから「とにかく儲けを出せ」と、常にハッパをかけられている。これに逆らおうものなら、たちまちにして袋叩きだ。中にはセールスマンの営業成績よろしく、各医師の手術や抗ガン剤治療の実績を棒グラフにして、これ見よがしに壁に貼り出している病院もあるくらいだからな。
─第二の理由は?
E これは私に言わせてください。製薬メーカー、医師、厚労省を筆頭とする産・学・官の利権を守るためです。医師は製薬メーカーや医療機器メーカーから研究費をもらい、厚労省の役人も業界団体を含めてメーカーに天下りする。かくいう私も製薬メーカーから研究費をもらい、期間限定の特任教授になっている身ゆえ、あまり偉そうなことは言えませんが‥‥。
─いやいや、この覆面座談会に出席してくれたことだけでも立派ですよ。
C いずれにせよ、患者としては医者の言うこと、勧めることを鵜呑みにせず、自分に必要な治療をよくよく考えて選択すること。それが、あたら医薬に殺されないための秘訣ということになるでしょうね。
【出席者プロフィール】
A=国立大学医学部長経験者(消化器外科医)
B=公立地域中核病院診療科長(総合ガン治療医)
C=私立医科大学附属病院経営幹部(泌尿器外科医)
D=私立大学医学部附属病院診療科長(緩和ケア医)
E=国立大学医学部特任教授(腫瘍内科医)
司会=医療ジャーナリスト