現在、学術界では古文書などに使われている「くずし字」をAIで解読する試みが進んでいるようです。
これによって、100年以上前に書かれた古い書物が、いとも簡単に現代語訳できるようになるかもしれません。とはいえ、AIは万能の神にあらず。現段階ではやはり人間の目利きが必要になってきます。
そこで今回ご紹介するのは「古文書解読検定」。その名のとおり、古文書の読解力をはかる検定です。
それでは例題を見てみましょう。
〈問〉写真のくずし字は、何と書かれているでしょうか? ①尤、②ふ、③示、④奈
実際の問題は、本物の古文書を印刷したような問題用紙が送られてくるので、その文章を現代の文字に直して返送するという形式です。解答に使える期間は1カ月ほどあり、くずし字辞典の利用も可能です。例題の答えは④となっています。
試験区分は3級、準2級、2級、準1級、1級の5段階となっており、受検料は4000円(3級)から9000円(1級)。
先日、私は3級に合格しましたが、何点以上が合格という基準があるわけではなく、全受験者のうち上位何割に入っているかで合否が決まります。
目安としては、3級なら全受験者のうち上位8割以上、1級なら上位3割程度といった具合です。
ちなみに私が受けた時は、20点満点のうち2〜3点取れれば、上位8割に入ることができたと思います。要するに、問題自体がかなり難しいわけです。
古文書には、現代の意味で「〜です」にあたる「〜で候」という字がよく出てきますが、そういう有名な常套句ですら、かなりくずされた字で書かれているため、初心者の方はまったく読めないのではないでしょうか。
読者の中には「古文書なんか読めるようになってどうするの?」と思う人もいるかもしれませんが、実は定年後の趣味に、古文書の読書を始める方は意外に多いようです。くずし字の入門講座がキャンセル待ちになるほどの人気ぶりですし、入門書も多数出版されています。
ふだんの生活の中では古文書に触れる機会は少ないかもしれませんが、実家の倉庫などに思いも寄らぬ高価な歴史書が眠っているかもしれません。
例えば、2011年に放送された「開運!なんでも鑑定団」(テレビ東京系)では、依頼者が新築祝いとして伯父から譲り受けたという古文書に、4000万円の価値がつきました。なんとそれは坂本龍馬による書状だったのです。神保町の古本屋で掘り出し物の古文書を見つけたり、その本に偉人たちがつづった直筆の手紙などが挟まっている、なんてことも十分ありえます。
こうした際に、くずし字が読めなければ「なんだこの汚い紙くずは!」と捨ててしまう可能性も‥‥。
歴史に埋もれたお宝を見逃さないためにも、また生涯の趣味を見つけるためにも、学んでおいて損はないはずです。
鈴木秀明(すずきひであき)/81年生まれ。東京大学理学部、東京大学公共政策大学院を経て資格アドバイザーに。取得資格数は600