ツラいことがあっても「白いおまんま」をたらふく食えたらマンゾク! なんて平和な時代は今や昔。政府備蓄米を手に入れるため、戦前の米配給のごとく長蛇の列に並ぶトホホな現実。健康で最低限の生活を脅かす日本の危機を招いた張本人はどこのどいつだ! 令和にしぶとく生き残る旧態依然の老害団体を叩き斬る!
6月9日に農林水産省が発表した米5キロ当たりの平均価格は4223円。1年前は2000円台前半だっただけにおよそ2倍! この米価高騰の戦犯と言われるのがJAだ。
経済ジャーナリストの荻原博子氏は憤りを隠さない。
「価格を吊り上げているのは下げたくない人。農家側に立っているJAやJAの全国組織である全農。価格が下がると、農家の儲けが少なくなってしまうのでなるべく高く売りたい。今慌てているのは問屋さんとJAです。随意契約の安い備蓄米が出てきたので、高く売ろうとしたコメのキャンセルが相次いでいるのです」
今年3月から3回にわたって行われた政府備蓄米の入札では、JA全農が95%とほぼすべてを落札。その後も、価格は一向に下がらず一時は5キロ4285円まで急騰。だが、5月下旬に“小泉コメ担当相”の指揮により随意契約で小売業者に直接売り渡した備蓄米が市場に出回ると、6月6日、JAは落札した備蓄米約29万トンの約半分に当たる14万トンを卸売業者に突如として出荷した。5キロ2000円程度の“小泉米”が飛ぶように売れる一方、3000円台のJA米は備蓄米フィーバーの蚊帳の外となってしまったのだ。
会見でJAは「意図的に遅延させている事実は一切ない」と反論したが、みすみす米価暴騰を許した誹りは免れないだろう。
「肥料や燃料費などが高騰しているので農家もやっていけない。よく日本の農業は補助金漬けというプロパガンダが流されますが、ヨーロッパやアメリカのほうがよっぽど補助金漬けです。フランスの農家は収入の半分は補助金。先進国には食料の安全保障という考えがあり、多額の補助金を出して食糧自給率を上げ、余ったものは海外に輸出している。世界的な飢饉の際には自国民を優先するので、有事には日本は干上がるしかない」(荻原氏)
コメ不足、高騰は長年悪政といわれた減反政策の放置が元凶であると、荻原氏が続ける。
「日本は減反政策を進めて、どんどん耕作放棄地が増えています。耕作放棄地だけで茨城県に匹敵する面積があると言われています。国を守るということは兵器を買うだけじゃない。農業も国防なんですよ。目先の価格を下げるには備蓄米は有効かもしれない。足りなかったら77万トンのミニマムアクセス米も『加工用や飼料米ではなく食用米として全部出す』と言えばコメの価格は下がるでしょう。でも、それは問題を先送りしているだけ」
SNSで鋭い政治風刺をする落語家の立川雲水氏は備蓄米騒動はマッチポンプだと口角泡を飛ばす。
「明らかに農政の失敗。減反政策は昨日今日じゃなくて、ずっとおかしいと言われてきた。原因はそこなんやから。小泉進次郎がヒーローになってるのはおかしい。『お前らのやってきたことやん』って」
そもそも農水省が発表するコメの作況指数や生産高が正確でなく“深刻なコメ不足”を隠蔽していると指摘する声も出ている。「ちゃんとした数字があるのかどうかも怪しい。でも数字がわからないなんていうのは行政としてありえない。農水省の天下り先がJAである限り、不透明な運営は続くでしょう」(荻原氏)
混乱に乗じて日本の農業に代わり、輸入米に市場を開放しようとする輩たちも見え隠れする。荻原氏は農業の行く末を案じる。
「日本の農業はおじいちゃん、おばあちゃん、かあちゃんのいわゆる“さんちゃん”農業が主流。採算度外視で、先祖伝来の土地を手放したくないから続けている人がほとんど。一方、大規模農家はトラクターなどの農機具を導入するのに多大な借金を負っている。今コメ市場を海外に開放したら先進的な農業から潰れます」
令和の米不足は瀕死の農業を長らく放置してきた大きなしっぺ返しに他ならないのだ。
「7月の参院選は『政府に農業の長期的なビジョンを立ててください』という選挙。消費税下げません。ガソリン減税しませんって言ってたのに、進次郎の備蓄米で自民に神風が吹いたようなもの。一番安上がりな政策。財務省も大喜びだし。でもこんなことでは困ると思うんですけどね‥‥」(荻原氏)
ナナヒカリ小泉米で、日本の農家、国民が干上がらなければいいのだが‥‥。
(つづく)