ボケないための「新脳活」50歳から8カ国語をマスターする方法(2)単語カードを胸ポケットに

 外国語を学ぶおもしろさに加え、新たな気づきもあった。脳トレや認知能力の向上といった思わぬ成果を実感したのだ。

「おもしろいデータがありまして、日本人が日本語のニュースと英語のニュースを聞いた時に、脳の血流を調べると、英語の方が血流量が増えているんですよ。私自身、外国語を学ぶようになってから、記憶力が如実に向上したように思います。例えば、いつも使うコインロッカーの番号を覚えていたり、なかなか思い出せなかった言葉がスッと出てきたり。やはり、意識を集中させて、読んだり聴いたりしているので、おのずと思い出す力や集中力が改善するように感じます。また、ある調査では、外国語を学ぶことで海馬が大きくなるなど、脳の構造に変化があったそうです。外国語を使う時は、母国語とは異なる神経回路を使うので、脳トレの効果も期待できます。私も80分のマンツーマンレッスンを終えると、脳が疲れてヘトヘトになるので、それだけ脳が鍛えられているのだと思いますね」

 中高年以上の世代にとっては魅力的な話だが、はたして、忙しい合間を縫いながら学習に向き合うことができるのだろうか?

「それは可能です。ひとつはちょっとした待ち時間も無駄にはしません。20代の頃から愛用している単語カードを胸ポケットに忍ばせ、ATMでの順番待ち、電車での移動時間、横断歩道の信号待ちなど、数十秒程度でも数個の単語は覚えられます。それと、あえて時間を作ることも大切です。朝食は、自宅から20〜25分ほど離れた場所まで徒歩で向かい、途中でリスニングと発音の練習を行う。体を動かすことが脳トレにもなるので、一石二鳥です。朝の早い時間帯ですから人も少なく、絶好の勉強時間でもあります(笑)。夕食も近くのレストランで食べるようにすれば、夕食を作る時間を省略できますし、料理が提供されるまでに英字新聞を読んで勉強時間にあてられます」

 では、どのような方法で学習を進めるべきなのか?数ある方法の中から、重要なポイントを教えてもらった。

「初めて外国語を学ぶ方は、まずは興味を持つことです。映画や歌などを通して、その国の言葉を知りたいと思ったら初めてドリルに取り組む。そうした心構えがいいと思います。それと、いきなり難しい外国語の原書を読もうとする人がいますが、これはオススメできません。当たり前かもしれませんが、易しいものから順番にレベルアップを重ねていくことが大切です。小説ならわかりやすい内容を選び、映像化されているなら映画も同時に観る。原書の大枠を掴んでからじっくりと読んでいくと、より理解が深まります。また、毎日のノルマを定めるのも有効です。私の場合は、英語の本を1日10ページ以上読むノルマを課していました。体調不良や楽しそうなパーティーの誘いなど、いろいろな理由を言い訳にせず、とにかくノルマを達成する。その成果が、強い心を育て、重要ではないことに振り回されない自分を作ることにも繋がります」

(つづく)

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