フェイスブックCEOが中国の検閲にブチギレた深意

 フェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEOが行ったスピーチが今後、波紋を広げそうだ。ITジャーナリストが語る。

「ザッカーバーグは10月17日(現地時間)にアメリカの大学で講演を行ったのですが、それが中国のインターネット規制、いわゆるグレート・ファイアウォール(金盾)を真っ向から批判。加えて、これを問題視しない世の中の傾向を明らかに揶揄するような内容だったんです」

 そこでは、フェイスブック傘下にあるWhatsAppと中国発のアプリTikTokを引き合いに出して、両サービスは世界中のデモ参加者や活動家に使われているが、同じようなサービスでもTikTokはアメリカにおいてさえ検閲を受けている。こんなものは「私たちが望むインターネット」とは言えない、とまで言っているのだ。

 中国では大規模な人海戦術を用いてネットが検閲を受けている事実は今さら言うまでもないだろう。天安門事件、言論の自由、チベット、台湾関係のコンテンツが厳しい検閲の対象となっているのは前提として、FacebookやTwitter、Instagram、YouTube、Google検索などが使えない。代わりに、WeChat(微信)やWeibo(微博)、Baidu(百度)など独自のネット文化が出来上がっていて、だからこそ産業障壁ともなっている。

「Facebookとしては、08年に利用ブロックされて以来この状況を打破して中国進出すべく、ザッカーバーグ自ら中国を訪問して政府高官と接触したり、北京の街頭をジョギングする姿をアップしたりと、失笑を買うような擦り寄りをしてきた経緯があります。にもかかわらず進出は現在まで叶っていません。今回のスピーチの内容は、とうとう腹に据えかねて本音をブチまけたように聞こえます」(中国事情に詳しいジャーナリスト)

 そして米中貿易戦争が始まり、加えて、香港デモに関する一連の騒動が続くというタイミングだ。香港デモや米中経済活動抗議運動家、活動家の例を挙げて非難しているのは、明らかに最近の香港デモに関するアメリカ企業の腰の引けっぷりを揶揄したものだ。

 ここ最近アメリカでは、NBAバスケットチームの幹部やアメリカのゲーム大手のBlizzardがオンラインゲームのプレイヤーが香港支持の発言をして対応を余儀なくされたり、アップルが香港の抗議参加者が用いていたアプリをAppStoreから削除するなどの騒動が続いたが、ザッカーバーグCEOのスピーチにはこうした“忖度”に対する明らかな苛立ちが感じられる。
 
「Facebookが中国進出を試みては頓挫し続けてきた傍らでは、アップルはニューヨーク・タイムズやギャンブル関連のアプリをやはり削除した経緯がありますし、マイクロソフトではBingの検索で天安門事件などの中国政府が快く思わない政治的コンテンツが見られなくなったり、Airbnbでは全国人民代表大会の期間中の宿泊予約をキャンセルするなど、それぞれ中国政府への忖度を行って上手くやってきたという経緯があります」(同前)

 先述のようにザッカーバーグも忖度は行ってきたのだからある意味逆ギレと言えなくもないが、それともアメリカ政府の強気に背中を押されて開き直ったのか。

(猫間滋)

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