姿を消したロシア派遣の北朝鮮兵…地獄の前線でも派兵は続く金正恩の卑劣

 韓国の情報機関である国家情報院(国情院)が2月4日、ある衝撃的な情報を発表した。なんと、1月中旬からロシア西部クルスク州で戦闘を続けていた北朝鮮兵が前線から姿を消したというのである。国情院は「詳細については確認中」とするも、兵士撤退について「多数の死傷者が発生したことが理由とみられる」と説明。主要幹部が全員死亡し、指揮命令系統に支障をきたしたため、撤退を余儀なくされた可能性がある、と分析している。

 北朝鮮は昨年11月、約1万1000人の兵士をロシアに送り、クルスク州でウクライナ軍との戦闘に参加していた。しかし、当初、ロシアに送られてくる北朝鮮兵士は「暴風軍団」と呼ばれる精鋭部隊だとの情報があったものの、様々な映像を見る限りクルスク州の最前線にいる北朝鮮兵士は大半が10代後半~20代の男たちで、細く痩せ満足な訓練も受けていないような者ばかりに見える。

「ウクライナメディアによれば、戦場に出る前の訓練に耐えられず脱走を試みる者も相当数いるとされます。戦場に出されたら出されたで、成人動画をむさぼるように見入ったり、アルコールを飲みたいがため応急処置キットのアルコールワイプと消毒液を摂取し、死亡事故が多発したという報道もありました」(北朝鮮ウォッチャー)

 戦場では北朝鮮兵30人に対して通訳1人、ロシア兵3人が配置され、このロシア兵3人が小隊に戦闘技術を指導しているとされた。しかし北朝鮮兵士はロシア語ができないため、訓練の過程でも十分な意思疎通は難しい。結果、ロシア軍としても彼らの処遇に頭を悩ませ、最終的には「弾除け」として使う以外方法がないという状況が続いていたようだ。

「となると、北朝鮮兵の死傷者が急増することは当然の話。しかし韓国国防省の報告書によれば、朝鮮人民軍末端兵士の月給は700北朝鮮ウォン(約120円)程度。これでは、市場で売られている冷麺1杯で終わってしまう。そのため、北朝鮮にいる兵士らは飢えに耐えきれず、ネズミやヘビ、カエルを貴重なタンパク質補充食料としているのが現状だと伝えられます。そんなことから、たとえ多少命の危険に晒されているとあっても、生きていくため、家族のためにウクライナで戦いたい、という若者は今も少なくないといいます。韓国情報筋によれば、北朝鮮軍派兵の対価は1人あたり2000ドル(約30万5000円)。もちろん、すべてが本人や家族に手渡されるわけではないにせよ、残された家族が北朝鮮で暮らす上では十分な額が手に入るはず。結果、家族のために自分の命を犠牲にしてもしかたがない、という兵士も少なくないようです」(同)

 国情院の発表によれば、11月以降、ウクライナで死傷した北朝鮮兵士は4000人を超えているというが、現地メディアによればゼレンスキー大統領は、「最前線に到着していないが、追加で2万~2万5000人の北朝鮮軍が(ロシアに)移動するかもしれないという情報を入手した」と語ったとう。

「この情報が事実であれば、追加を含め北朝鮮がロシアに送り込まれる兵士の数は3万人以上に増えることになり、これは2個師団規模に該当する。北朝鮮には推定20万の軽歩兵がいるとされますが、金正恩総書記は最大10万人まではつぎ込む可能性があるとの情報もあります。兵士を投入すればするだけ正恩氏の手元には外貨が振り込まれるわけですから、途中で辞めるわけがない。つまり今回の撤退は一時的なもので、今後も北朝鮮兵士の派兵が続くことになるのは間違いないでしょうね」(同)

 そこには、人民の命と引き換えに外貨獲得に勤しむ独裁者の姿が透けて見えるのである。

(灯倫太郎)

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