100円の収入を得るために発生する経費を表し、鉄道の各路線の経営状態の指標として用いられる営業係数。23年度のJR東日本管内でワーストとなる1万3580円を記録したのが、千葉県の房総半島内陸部を走る久留里線の久留里―上総亀山間だ。
慢性的な超赤字区間だったこともあり、JR東日本・千葉支社は昨年11月に発表したリリースの中で「バス等を中心とした新たな交通体系へのモードチェンジを図ることが必要」と路線廃止の可能性について言及。そこで対象となっている久留里線の末端区間の各駅を列車で実際に巡ってみることにした。
久留里線の木更津―上総亀山の32.2キロだが、廃止検討区間の久留里―上総亀山間は9.6キロ。ただし、首都圏の路線でありながら同線の全駅には自動改札機はなく、Suicaなどの交通系ICカードは利用できない。“都心からもっとも近いローカル線”と呼ばれている意味が分かった気がする。
沿線は途中までのどかな田園地帯が続いていたが、末端区間は山間部で都心50キロ圏内とは思えない景色が続く。駅も地方で見かけるようなレトロ駅舎ばかりで、木更津、久留里以外は無人駅。特に久留里以遠の区間は運行本数が少なく、ほとんどの列車は朝と夕方以降で日中には1往復あるだけだ。
ちなみに乗車したのは学校が冬休み期間中だったこともあり、始発の上総亀山行きの2両編成の列車の乗客は10数名。その多くは鉄道ファンらしき者たちで、折り返しの列車にも乗っていた。
それでも上総亀山は、駅近くに広がる亀山湖は釣りスポットとして人気。周辺にはハイキングコースも整備されている。また、久留里は「名水の里」として有名で、町の至るところに水汲み場が存在。さらに隣の平山駅に向かう途中には観光名所の久留里城もある。天守閣は復元されたものだが遺構が数多く残っており、山城なのでそこからの眺めは絶景だ。
首都圏に住んでいる方なら日帰りも可能。近場でローカル線の気分が味わえる久留里線で沿線ぶらり旅を楽しむのもよさそうだ。
(高島昌俊)
※写真は久留里駅に停車中の久留里線