米大統領選の結果、トランプ氏が圧倒的勝利を収めたが、過去2回の大統領選より多くの支持票を獲得し、議会の上院と下院では共和党が過半数を占めたことで、第2次トランプ政権の政策は1期目より過激、かつ大胆なものになる可能性が極めて高い。
トランプ氏は自らを「タリフマン(関税男)」と位置付け、政権1期目では米国の対中貿易赤字を是正する目的で、中国に対し最大25%の関税制裁を次々に発動した。そして今回、その中国に対しては一律60%の関税を掛けると豪語しており、実行に移される可能性は高い。一方、このタリフマンによる関税発動によって、日本企業も壊滅的な被害を受けることになる。
関税60%の対象になるのは中国製品だとされているが、それは中国企業が生産したものを意味するのではなく、中国で製造した製品を米国へ輸出する日本企業もその餌食となる。大手自動車メーカーなど、日本の製造業が中国で物を作り、それを米国に輸出する企業は多い。そこでの関税60%は大きな負担となり、中には輸出先を米国からグローバルサウスなどにシフトさせる動きも出てくるかもしれない。
また、トランプ氏はメキシコから入ってくる輸入車に対する関税を200%に引き上げると示唆している。これはメキシコで自動車を生産し、それを米国へ輸出する中国の自動車メーカーを意識したものと考えられるが、トヨタや日産、ホンダなどもメキシコにある自社工場で車を製造して米国へ輸出しており、当然ながらこれも対象となる。ホンダなどはメキシコで生産した車の8割を米国へ輸出していることから、強い警戒感を示している。
一方、トランプ氏は中国を除く外国製品に対する関税も10%~20%引き上げると主張しており、これも実行に移されることになる。欧州や日本のような米国の同盟国は適用除外になるとの考えは通用せず、トランプ政権は保護貿易主義的な姿勢に徹することで、アメリカファーストを4年間完徹しようとしているのだ。
トランプ氏は日本製鉄によるUSスチールの買収計画でも、それを完全に阻止するとの姿勢を堅持している。この問題に火が付くようなことがあれば、トランプ氏の日本企業への怒りや不満が増大し、日本に対する関税措置を強硬なものにしてくる可能性も排除できない。日本企業はトランプ関税の影響を避けられない状況にある。
(北島豊)