犯人は「変人」トランプ氏暗殺未遂事件で「ロシア指示」「ウクライナ指示」双方が飛び交うトホホ余波

 さすがに“自分の命が狙われた事件は、バイデン大統領とハリス副大統領による発言によって引き起こされた!”は、飛躍しすぎではないだろうか。

 9月15日、米フロリダ州のゴルフ場で起こった、トランプ暗殺未遂事件。一夜明けた16日、FOXニュースデジタルの取材に応じたトランプ氏は、「彼(容疑者)はバイデン氏とハリス氏の言葉を信じ、それに従って行動した。彼らの言葉のせいで私が撃たれることになった。私はこの国を救おうとしている一方で、彼らは国を破壊しようとしている」と発言。Xでも、討論会などでのハリス氏の“虚偽発言”が米政治に対する憎悪を呼んだとして、「共産左派による言葉のせいで銃弾が飛び交い、悪化するばかりだ」と、事件にかこつけてバイデン政権を痛烈に批判した。

 逮捕された男は、ライアン・ラウス容疑者(58)。裁判所に提出された書類によれば、容疑者は前日から食糧持参でゴルフ場の茂みに約11時間半にわたって潜伏していたという。司法省は製造番号を消した銃の不法所持など2件の罪で男を訴追し、認否手続きは30日に行われる予定だとされている。

 茂みの中に11時間隠し、その瞬間を狙っていたと聞けば、誰もが「ゴルゴ13」並みの腕利きスナイパーを想像するだろう。しかし、16日付の米紙ニューヨーク・ポストによれば、実はこの男、昨年、ウクライナ外人部隊に志願するも戦闘員らから「変人」呼ばわりされた挙げ句、ダメ出しを食らい追い払われたという経歴の持ち主だというのだ。

 容疑者を知る米国人戦闘員は同誌の取材に答え、こう語っている。

「戦闘員の中に狂ったバカ者がいても、誰も驚かない。ただ彼は、そんな中でもより狂った側にいた変人だった」

 さらに容疑者は軍務経験ゼロ。ウクライナ外人部隊への入隊が拒否されたのも当然だったといえるだろう。

「実は、ラウス容疑者はウクライナ滞在中、米紙ニューヨーク・タイムズやルーマニア版ニューズウィークなど、いくつかのメディアに登場したことがあり、その際にはパキスタンやイランを経てウクライナへ渡ったと答えています。ただ、外人部隊への入隊を拒否されて以降、ウクライナのどこで何をしていたのかは不明。帰国後、なぜトランプ氏暗殺を計画したのかもわかりませんが、いずれにせよ詳細は今後の裁判で明らかになっていくことでしょう
」(外報部記者)

 今回のトランプ氏暗殺未遂事件を受け、SNS上では、またぞろ「ロシアよる暗殺指示説」などの、お決まりとなったロシア政府による陰謀説も飛び出しているが、プーチン氏の盟友であるメドベージェフ元大統領は16日、Xを更新。「もしトランプ氏を狙撃した失敗作ラウスが、この暗殺未遂のためにキエフのネオナチ政権に雇われていたとしたら、どうだろうか?」と、逆にウクライナによる関与説を匂わせている。

「今回の事件では、トランプ氏を支持する米実業家のイーロン・マスク氏が《誰もバイデン大統領やハリス副大統領を暗殺しようとすらしない》とXに投稿。ハリス氏の暗殺を望んでいるかのような発言だとして批判が殺到し、マスク氏が慌てて投稿を削除しました。これはフォロワーからの《何で彼らはトランプ氏を殺したがるのか》との書き込みに対し、マスク氏が反応する形で投稿されたものですが、削除後マスク氏は、《ジョークは、人々が文脈を理解しない場合、それほど笑えないことが判明した》と改めて投稿。しかし謝罪の言葉もなく、あたかも読み手の受け取り方に責任があるといわんばかりの物言いに、SNS上ではさらにマスク氏に対する批判が広がり、結果、炎上となったことはいうまでもありません」(同)

 さて、外人部隊入り拒否の「変人」容疑者にロシア政府陰謀論、そしてマスク氏による「X」暴言と「暗殺未遂はハリスのせい」発言等々、波紋が波紋を呼ぶトランプ氏暗殺未遂事件。 11月の大統領選まであと2カ月だが、まだまだ一波乱二波乱はあることは間違いなさそうだ。

(灯倫太郎)

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