外資に漁られる冬のリゾート地“スキー場が買えるのは日本だけ”の理由

 6月5日、シンガポールのリゾート大手のバンヤン・グループは、7月26日から京都で高級ホテルをスタートさせると発表した。同グループはすでに日本国内で12のホテルを展開しており、さらに25年には北海道・ニセコに、27年にはプロ野球日本ハムの本拠地であるエスコンフィールドでもホテルを開業する予定だ。

 このように国内外からインバウンドで熱い視線を送られている日本では、アジアの高級リゾートの進出が相次いでいる。

「外資による日本のリゾート買いでは、北海道のニセコ、トマム、夕張などに進出が相次ぎました。特にニセコには、香港、シンガポール系が続々参入。東南アジア系だけでなく、パークハイアットやリッツカールトンといった世界的に有名なホテルも進出しました」(経済ジャーナリスト)

 だが現在ホットなのが、やはり冬のリゾート地の長野県だ。

「長野県と新潟県の県境をまたぐ妙高・斑尾高原一帯では、シンガポールの不動産ファンドのペイシャンス・キャピタルがスキー場やホテル跡地を購入。5月にはファンドの代表が長野県講演を行い、『ここしかないな』っと、いかに本腰を入れているかを語りました。実際、最大で700億円を投入する予定としています」(同)

 長野県では他に、長野五輪の会場にもなり全国的にスキー場として有名な白馬村も同様。22年にはシンガポール系のカノリーリゾーツが高級ホテルをスタートさせ、これに遅れてはならぬとばかり、やはりシンガポール組のバンヤンツリーが、東証スタンダード上場で東急グループのと組んでホテル運営に乗り出しています」(同)

 だが少しでも旗色が悪くなれば、撤退も早いのがサバサバした外資系。白馬に力を入れているバンヤンは、ニセコから白馬に開発先を乗り換えた経緯がある。

「これらのリゾート地は、コロナ禍で人の移動がなくなっても地価があまり下がりませんでした。理由は上質な雪があれば、それだけで十分な価値を持つから。また世界の有名な冬のリゾート地は、土地の値段が高かったり、国の規制があったりで買えません。ところが日本では買える。ペイシャスのファンド代表が『ここしかない』というのは、地元へのリップサービスだけではなく、言葉通りの意味でもあるのです」(同)

 だがその雪も、地球温暖化の問題で、だいぶ先にはどうなるか分からない。地元は期待を込めつつも、振り回されるだけはゴメンというのが本音らしい。

(猫間滋)

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