腰のけがのため、春場所7日目の3月16日から休場した横綱・照ノ富士。
大関に昇進しながら両膝を痛めて、一時は序二段にまで陥落。「いつ辞めてもいいという覚悟でやっているから、1日1日が勝負」と必死の思いでリハビリと稽古を行って、みごと横綱の座をつかんだ。横綱審議委員会からも称賛の嵐が吹き荒れたものだ。
「どん底まで落ちてよくここまで戻ってきた。ファンの心を掴んだ。優勝インタビューでも浮かれたところがまったくない」
モンゴル人横綱は朝青龍、白鵬と非常に評判が悪かったのに、照ノ富士はすこぶる評判が良いのだ。相撲ライターが言う。
「白鵬も最初は悪くなかったんです。しかし、オリンピックで土俵入りを見せる話が出てきたあたりから、本人が錯覚してしまった。千秋楽の表彰式の後に観客を巻き込んで三本締めをやったり」
三本締めは表彰式後、相撲の神様を送り返す「神送り」の後に行うもので、横綱審議委員会からも苦情が出ていた。
傲慢不遜の白鵬の評判は一気に落ちたが、浮かれたところがまったくない照ノ富士には、横審でも引退を求めるような話は出ないという。相撲ライターが続ける。
「もし優勝ということになれば、照ノ富士は名横綱の域に入る優勝回数10回になる。どん底まで落ちて掴み取ろうとしている記録だけに、横審の間には温かく見守ろうという空気が強い」
むろん、2場所続けて無様な相撲で途中休場なら、引退勧告が出てもおかしくない。救いなのは尊富士、熱海富士ら手強い相手が同じ伊勢ヶ浜部屋の後輩であることだ。
「強敵は琴ノ若改め琴桜、大の里、豊昇龍です。彼らとは戦わなければならない。復活Vか引退か、名横綱に名を刻めるのか。夏場所は、照ノ富士にとって非常に重要な場所となる」(同)
春巡業の調子は「まずまず」、膝の状態は「先場所よりまし」と本人は言うが、5月12日の初日はどうなるか。
(蓮見茂)