不法移民が1年で10倍増、中国のホワイトカラーがアメリカを目指す理由

 アメリカが長年悩まされてきた中南米からの不法移民。彼らの多くは米国とメキシコの国境から入り込むが、その距離は3145キロに及び、税関・国境警備局(CBP)が全域をカバーするのは容易ではない。

 そんな米国南西部の国境地帯に「ある異変」が起きているという。なんと、中南米に加えて、中国からの不法移民が急増しているというのである。国境で拘束された中国籍の移民の数は2023年で3万7000人。これは前年のおよそ10倍にも及ぶ。

 ちなみに不法移民となる中国人の大半は中国を脱出後、まず南米のエクアドルに入り、コロンビアに移動。パナマとの間には道路がないのでジャングルを歩いて国境を越え、そこからはトラックなどに隠れて米国との国境を目指す。昔から密入国の斡旋を手がける「蛇頭」などの犯罪組織が現地ブローカーと組んでサポートしているが、業者に頼らず個人で移動する者も少なくないという。

 だが、そもそも中国人はなぜ海を越え、遠く離れた米国を目指すのか。

「不法移民の多くは、不動産バブルの崩壊やゼロコロナ政策による失業、減収で中国での暮らしに限界を感じたり、共産党による一党支配の政治体制が続く母国で子供を育てたくないと考えている人たちのようです」(不法移民問題に詳しい大手紙記者)

 彼らは貧困層というより大半が中間層で、大卒者や海外の留学経験を持つ者も少なくないらしい。さらに弁護士や税理士、医師といった専門職に就くホワイトカラーも多く含まれているという。

「中国人の場合、中南米の人より亡命が認められる割合が高く、それも米国を目指す大きな理由です。以前はビザを取得して正規ルートで米国や他の国々へ移住していましたが、中国人に対する審査が厳しくなり、富裕層でないと条件をクリアできない国が増えてきたことも影響しています」(前出・記者)

 ちなみに、日本国内の中国人不法滞在者は、出入国在留管理庁によると6788人(23年7月時点)で、前年同月(6384人)と比べて404人の増加となっている。

「日本はすでに住んでいる親族などのツテを頼って就労ビザを発行してもらう正規の入国がほとんど。しかし、中には、よりハードルの低い留学や技能実習で入国して、そのまま不法滞在、不法就労する例も後を絶たず、治安の悪化などが懸念されています」(前出・記者)

 中国人による不法移民の問題は、対岸の火事ではないようだ。

(トシタカマサ)

※写真は米国・メキシコ国境

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