広島・中村奨成の死に物狂いに重ねられる衣笠祥雄の「覚醒」

 広島カープ・中村奨成が、目の色を変えている。沖縄2次キャンプでは開幕1軍入りを目指し「限られたチャンスの中で結果を出さないといけない」と精力的に打撃練習に取り組んでいる。

 一部週刊誌に「中絶トラブル」を報じられてからは、ファンからソッポを向かれた中村。一時はトレードに出されるのではないかと言われていたが、松田元オーナーの温情もあり、なんとか契約にこぎ着けた。しかし、22から96への背番号変更は、「今季活躍できなければ契約しない」という球団からの強いメッセージといえるだろう。

 さすがに中村も後がないことを実感したのだろう。春季キャンプでは休日返上で汗を流し、初の対外試合では本盗を決めるなど奮闘。新井貴浩監督をニンマリさせた。そんな中村の姿に、ファンからはカープのレジェンド、鉄人・衣笠祥雄さんを重ねる声が上がっている。

 ベテランスポーツライターが当時を振り返る。

「衣笠さんは平安高等学校(当時)を卒業後、カープに入団しましたが、いきなり高額の契約金を手にしたことで浮かれ高級外車を購入し、連日、夜の街に繰り出すなど派手に遊びまくっていました。そんな衣笠さんに業を煮やした名スカウト・木庭教さんは2年目のオフに衣笠さんを呼び出し、『お前、ちょっとそこに正座せい!どれにする?』と、広島の企業名が書かれた紙を見せました。衣笠さんの顔色は一瞬で変わり、この時初めて『クビになるかもしれない』と自分の置かれた立場を知ったと言います。その後の衣笠さんの活躍は誰もが知る通り。必死に練習に取り組み、野球殿堂入りするほどのレジェンド選手になりました」

 中村は広陵高時代の17年夏の甲子園で、大会史上最多の6本塁打をマークし、この年のドラフトで広島から1位指名され入団した。目の色を変えて野球に取り組むまでにはずいぶんと時間がかかったが、元々ポテンシャルは高いだけに、ファンは第二の衣笠祥雄さん誕生を期待したいところだろう。

(ケン高田)

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