ココがヘンだよ!昭和の健康常識(2)「紅茶キノコ」が欧米で大流行していた

 インターネットがなかった昭和では、テレビや口コミが絶大な影響力を持っていた。それゆえ、際立った「健康法」が爆発的に流行しては消えていった。あの健康法は今どうなっているのか? その効果のほどを探ってみたところ─。

 昭和40年代後半、「紅茶キノコ」なる健康食品がブームを巻き起こした。紅茶に砂糖を加え、培養したゲル状の菌(通称=紅茶キノコ菌)を漬け込み、発酵させた飲料だ。自宅で手軽に作れ、菌をご近所で融通し合うことで口コミが広がり、主婦の間で爆発的にヒットした。国会でも取り上げられ、当時の厚生省環境衛生局長が「実態」について答弁を迫られたほどだ。

「医師としてはオススメしにくいですね。個人で菌を培養するということは雑菌も入るし、その菌をご近所に株分けするというのも引っ掛かります」

 と、佐藤医師が指摘するように、当時は菌の衛生管理が不十分だった。愛飲者が体調を崩したことが広く知れ渡り、一気にブームは下火になったものだ。

 しかし、数年前から欧米でブームが再燃。最近では「コンブチャ」と名称が変わり、日本にも逆輸入されて吉川ひなのなどの著名人がSNSでオススメするまでに‥‥。くれぐれも菌の衛生管理には注意したいところだ。

 飲料に限らず、昭和にはブームを引き起こした健康器具もある。その1つが「ぶら下がり健康器」。昭和50年前後にテレビ通販で「ぶら下がるだけで健康になれる」と紹介され、大ヒットとなった。が、勢いで買ったはいいが、あっという間に使わなくなり、多くは最終的に室内用の物干しと化す末路をたどったが、

「猫背を伸ばし、老化により狭くなった椎間板を伸ばすこともできるので、理にかなったグッズです」(佐藤医師)

 この器具、実は現在もネット通販で販売されている。昭和よりも安価になっているが、勢いだけで買わないことが肝要である。

 ブームは去ったが、強烈すぎて忘れられない健康法もある。「飲尿健康法」だ。昭和から平成にかけて、山梨県の内科医が「自分の尿を飲むことで免疫機能が発動する」と提唱し、巷に実践者が現れたのである。

 今では鳴りを潜めた感もあったが、4年前にフリーアナの古舘伊知郎(69)が「3年間続けていた」と告白し、久々に話題となった。だが、村山医師は懐疑的だ。

「便は雑菌だらけですが、正常な尿は無菌です。成分の80%以上は水分で、あとは尿素やナトリウムなどだから飲んでも無害です。ただ、泌尿器科医としては、現代人の尿は汚れていることが多く、オススメできるものではありません」

 飲むために尿を検査するぐらいなら、勇気を振り絞る必要のない健康的な飲料はあふれるほどある。ブーム再燃はなさそうだ。

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