Q4 保険治療より、自費診療のほうが「いい治療」になるのか?
ご存じのように、歯科治療には「保険」と「自費」がある。だが、金額的にも時間的にもその差は大きい。
「例えば、かぶせもので保険適用となるのが、俗にいう銀歯。これは金が12%、あとは銀とパラジウムの合金でできています。でも、これはもともと、金合金(カラットの高いもの)だと、原価が高く患者さんの経済的負担が大きくなる。そんな理由から代用合金として造られたもので、ベストという材料ではありません。ですから確かに金銭的な差額はありますが、長い目で見れば、やはりそれなりの素材を選んだほうが賢明と言えるでしょう」
さらに保険治療の場合、「この治療に関しては何回まで」といった、治療回数にも制限があるという。
「入れ歯を作るのに型どりをする、かみ合わせを診る、それが実日数としてそれぞれ決まっていて、少なすぎるとダメ。多すぎると、なに余計なことしているんだ、となるんですね(笑)。一方、自費ならば時間も費用もかけられる治療になるため、さまざまな面でグレードは上げられる。そういうメリットはありますね」
Q5 歯を抜かない、削らない医師と歯を抜く、削る医師、どちらがいいのか?
「できるかぎり歯は抜かない、削らない、というのが大原則。ただ、中には抜かないほうが害になる場合があるのも事実です。例えば、歯周病でブラッシング指導したことをきちんと守って、歯茎に変化が現れた場合は厳しい状態でも残して頑張ってみましょう、ということはあります。逆に『とにかく早く安くやってほしい!』という患者さんにとってはグラグラになった歯をよかれと思って残しておくことが害になってしまうケースもあります。そういう点では歯を抜く医師、抜かない医師どちらがいいのかは一概に言えないというのが事実ですね」
そして、保険治療は全ての治療が点数で換算される。
「日本の保険は基本、疾病保険なので、この治療をした場合は何点でいくら、という形になっています。抜いたり削ったりすれば、歯の状態、病気の状態が変わっていくので、病名も変わり、治療が増えていく。中には、あえて削ることで点数を上げている医師がいるのも事実ですね」
Q6 現在、全国で歯科医院はコンビニより多い状況だが、歯科医を目指す人が、それだけ多いということ?
以前、歯科医の世界は大半が世襲と言われたそうだが、70年代の歯科医不足を境に歯学部とその定員数を急増させ、一般家庭の子弟たちが続々入学するようになったという。
「やはり医学部は入学のハードルが高いし、卒業しても10年は使い物にならない。と同時に、相当太い親のスネもいる。ならば、6年かかるけれど歯学部なら医学部より費用が少ないし、子供に国家資格を取らせてやれるというメリットもある。そんな理由で歯学部を選ぶ親御さんが増えているようです」
結果、大学を卒業し5〜6年で開業、というケースも多いという。
「通常、医大生は大学を卒業して研修医になって、勤務医となりますが、内科や外科には一般的に専門分野があって、そこで狭く深く経験を積んでいかなければなりません。そして開業するためには病院で10年、15年経験を積んでから、ということになる。ところが歯科医の場合は口の中だけなので、ある程度、短期集中で経験ができる。内科や外科の先生たちと比べ、開業までの時間が短い理由はそこにもあるんです」