注目を集めた衆参2補選の与野党対決は、10月22日に投開票を迎え、衆議院長崎4区で自民党が勝利したものの、参院徳島・高知選挙区は野党側が議席を獲得した。9月に発足した第2次岸田再改造内閣にとって〝初陣〟となったが、まさかの1勝1敗に終わった。自民党関係者は渋い表情でこう話す。
「2勝できるとの楽観論もありましたが、ふたを開けてみれば、長崎は一本化した野党側が次々と応援演説で攻勢を仕掛けて大接戦にもつれ、最後は厚い保守地盤で逃げ切ることができた。ただ、徳島・高知は投票終了直後に敗北が決まり、もともと持っていた議席を奪われる惨敗劇。政権への逆風をモロに感じる選挙戦でした」
翌23日朝、総理大臣官邸で岸田文雄総理は、「真摯に受け止める」と記者団に話し、衆議院の解散についても「今は考えていない」と述べるにとどまった。それでも、完全に年内解散の戦略が崩れたわけではなさそうだ。前出・自民党関係者が続ける。
「内閣支持率が下降線をたどる中、岸田総理が所得税の減税を検討するように指示したのが合図だったとみる向きも強く、反転攻勢の一手になると考えているはず。野党側も補選で善戦はしたけど、次期衆院選に向けて協力体制は一枚岩とは言えず、準備不足の情報が入ってきている。それもあって、年内解散は消えたわけではない」
今ならまだ勝てると思ったとしても、岸田総理は「増税メガネ」と揶揄され、円安や物価高への対策は不十分で国民の不満は爆発寸前。連立を組む公明党との間にも亀裂が走っているだけに、解散でバッジを失う自民党議員も多いだろう。
自民党内部では「落選候補リスト」の存在も囁かれているようで、全国紙の政治部記者が声を潜めてこう明かす。
「『世界平和統一家庭連合』(旧統一教会)との接点が明るみになった山際大志郎元経済再生相と、旧統一教会の韓鶴子総裁を『マザームーン』と連呼した山本朋広元副防衛相はダンマリを貫き、有権者も不誠実な態度を忘れていないでしょう。その他にも、『死刑(執行)のはんこを押す地味な役職』発言で事実上更迭された葉梨康弘元法相、政治とカネの問題で辞表を提出した寺田稔元総務相や秋葉賢也元復興相も危険水域。特に“マザームーン山本”と揶揄される山本議員や秋葉議員は2021年の衆院選では、小選挙区で立憲民主党の候補に敗れ、比例での復活当選。年内に解散総選挙となれば、いっそう厳しい選挙戦を強いられるでしょう」
いずれにしろ、どのタイミングで解散しても、スキャンダル議員には厳しい選挙戦が待ち受けていそうだ。
(風吹啓太)