「剥製にするつもりだった…」腐乱死体189体が暴いた“グリーン葬”の闇

 昨今、米国をはじめ、エコの観点から世界で注目されている埋葬方法がある。それが「グリーン葬」だ。かつて米国では土葬が大半を占めていたが、エンバーミング施術に用いるホルムアルデヒドによる環境汚染が叫ばれたことで、火葬が主流となってきた。とはいえ、こちらも火力による多量の温室効果ガス排出は否めない。そこで、火葬や土葬ではなく環境に優しいグリーン葬に注目が集まっているというのだ。

 ところが、そんな中、米コロラド州の「グリーン葬」をうたう葬儀社で、189体の腐乱遺体が発見され、地元警察が捜査員を総動員する上へ下への大騒動になっているというのだ。

「現地紙デンバー・ポストによれば、遺体が発見されたのは、デンバーの南方約160キロにある『Return to Nature Funeral Home』という葬儀社。周辺住民から、異臭がするとの通報を受けた警察が出動したところ、適切な処置が行われずに腐敗した遺体が多数発見されたといいます。葬儀場の経営者は当局の取り調べに対し『剥製にするつもりだった』と供述しているようですが、同社は昨年11月からこの場所で葬儀社を運営。そのため州当局は、別の場所で運営中の葬儀場の免許も停止し、そちらも含めて捜査を続けているようです」(国際部記者)

 グリーン葬は現在、フロリダ州をはじめ、イリノイ州、ユタ州、カリフォルニア州、ジョージア州等、全米50州のうち20州で合法化されているとされるが、世界の自然葬に詳しいジャーナリストはこう話す。

「グリーン葬の中には、アルカリ加水分解で遺体を液状に溶かすアクアメーションという埋葬法のほか、液体窒素で遺体を冷凍状態にし、乾燥させた後粉砕し、その粉から金属などを除去するプロメッション、さらには遺体を分解して、堆肥に変え、養分として新しい命へ循環させるリコンポジションという方法があり、州によって若干異なるものの、多くで法案が可決され、すでに実践されています。ただ、グリーン葬では通常、遺体の腐敗を遅らせるために強力な防腐剤を使用し、ある一定期間は厳重に冷蔵保存するはず。おそらく、今回摘発された葬儀社は、その辺りの過程に何らかの問題があったということなのでしょうが、いずれにせよ、およそ190もの遺体を放置していたわけですからね。グリーン葬のイメージダウンは免れないでしょう」

 デンバー・ポストによると、コロラド州は米国で唯一、葬儀社の許可制度がない州で、定期検査もないことから、「規制はあってないようなもの」(前出のジャーナリスト)だという。

 そんな背景もあり、同州では、企業家が金儲けだけを目当てに参入したり、まったく業種が異なる企業が運営する葬儀社も多く、近年では葬儀社にまつわる事件が多発。遺体をぞんざいに扱っていることが発覚するばかりか、遺体の部位を違法に販売する輩や、葬儀場から身元不明の胎児の遺体が発見されるといった、おぞましい事件も起こっているという。

「たしかに、CO2排出量の少ないグリーン葬がエコであることは言うまでもありません。また、牛や豚などの家畜が農場で死ねば、一体丸ごと堆肥化されてきた歴史的背景もあり、人間の遺体も堆肥化できるという考え方があっても間違いではないでしょう。ただ、死者の尊厳を考えると、そこに抵抗を感じる人も多く、そこがグリーン葬の課題ですね」(前出・ジャーナリスト)

 悲しいかな、今回の事件がグリーン葬の闇を浮き彫りにしたようだ。

(灯倫太郎)

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