ユーチューバーに転進する芸人が増えるなか、大成功を収めたのが“カジサック”ことキングコングの梶原雄太だ。
18年10月にチャンネルを開設し、19年末までに登録者数が100万人に届かなかったら芸人引退を公言していたが、7月11日に見事、目標を達成。各動画の再生回数もコンスタントに数十万回を記録しており、もはや人気ユーチューバーの1人に名を連ねている。
「梶原が成功した理由として大きいのは、本気でユーチューブに向き合ったこと。ちゃんとした編集を施した10分超の動画を毎日のように公開しており、その内容も多彩なゲストを呼んだり、ロケ撮影も多用するなど、まるで梶原の冠番組を観ている気分になれます。それに比べると芸人ユーチューバーの多くは、固定カメラでの一人語りという安易な作りに留まっているものがほとんど。中には手の凝った動画作りに勤しむ芸人もいるものの、彼らは芸人としては無名なことが多く、肝心のコンテンツに厚みが出ません。その点で梶原は、芸人としても有名な存在でありながら、本気でユーチューブに取り組んだことで、トップランナーとなることができたのです」(IT系ライター)
そんなカジサックの牙城に挑もうとしているのが、教育系ユーチューバーとして頭角を現してきたオリエンタルラジオの中田敦彦だ。この4月に立ち上げたばかりの「中田敦彦のYouTube大学」は、8月15日時点で登録者数が69万人を突破、増加ペースはカジサックとほぼ並んでおり、この調子なら中田も登録者数100万人の大台にのる可能性は高い。
「梶原のチャンネルは、手法としては従来の人気ユーチューバーの域を出ていません。なので、カジサックと同等以上の知名度のある芸人が同じ熱量で取り組めば追いつくことも可能でしょうし、客を奪われる恐れもあります。それに対して中田のほうは、歴史や社会問題といった難しい問題を分かりやすく解説しており、これは慶大卒の頭脳とトーク力を持つ中田だからこそ可能となるもの。強力なライバルが現れる恐れは少なく、中田はトップかつオンリーになれる可能性を秘めています」(前出・IT系ライター)
この調子だと、芸能界のユーチューバー争いは、頭打ちのカジサックvs将来性豊かな中田という図式になりそうだが、ユーチューブ事情に詳しいガジェット系ライターは、別の見方を示す。
「中田が教育系のチャンネルを始める際には、梶原から『あっちゃん教育系いけるよ』とのアドバイスをもらったと中田本人が明かしています。つまり梶原には中田だからこそ向いている分野が見えていたわけで、ユーチューブの世界を俯瞰的に眺めることができていたのでしょう。この能力は一朝一夕に得られるものではなく、その意味でも梶原が本気でユーチューブに取り組んでいたことがわかります。しかも梶原の場合、世間を揺るがした吉本騒動の発生前からチャンネルを開設していたのも大きい。そのおかげで彼の動画には宮迫博之も出演するなどアーカイブとしての価値も高く、開設後わずか10カ月とはいえ、この先行者利益には相当な価値があります。それゆえ他の人気芸人がカジサックの牙城を脅かす恐れは、ほとんどないのではないでしょうか」
どうやら梶原と中田は競合関係ではなく、共棲関係にあるのかもしれない。
(浦山信一)