8月20日にスペイン対イングランドで決勝戦がおこなわれるサッカー女子ワールドカップ。日本代表のなでしこジャパンは、準々決勝でスウェーデンに惜しくも敗れたものの、1次リーグは3戦全勝で11得点失点0。ベスト16を賭けた試合ではノルウェーを3対1で下すといった具合に、テクニックに優れてパスも良く回る、破壊的な攻撃力で世界から賞賛を浴びた。
しばらく低迷にあったなでしこジャパンの復活は明るい話題になったものの、今回大会を巡っては、やたらとカネにまつわる話題が多かった。
「男子のW杯18年ロシア大会の優勝賞金3800万ドルに対し、女子の15年カナダ大会の優勝賞金はわずか200万ドルと、男女の間で格差がありました。そこでFIFA(国際サッカー連盟)は27年までに男女平等にすると公約していて、今回大会では女子の優勝賞金が429万ドルに増額。賞金総額も1億1000万ドルにアップし、19年フランス大会の3倍以上、15年カナダ大会と比べれば7倍以上に増えています。それでもまた男子とは4倍以上の開きがあり、公約の実現にはまだまだ様々な改革が必要なのです」(スポーツライター)
賞金の工面で手っ取り早いのが、大会放映権料の値上げだ。今回大会は、男子の3分の1に当たる1億ドルの値段が付けられたとも伝えられた。ところが正直、日本では視聴率に見合わない。NHKで内定していたテレビ放映がいったん白紙になり、日本メディアが総撤退して買い手が付かない状況となり、開幕1週間前になって急きょNHKに落ち着いたことは報道された通りだ。
女子サッカー関係者はほっと胸をなで下しただろうが、なでしこが活躍しても放送するNHK以外のメディアはあまり積極的に取り扱わなかった。イギリスの有力紙「ガーディアン」が1次リーグの結果を格付けして、なでしこジャパンが「今大会No.1」とまで評価していたにもかかわらず、ワイドショーはほぼ沈黙に等しかった。
それでも選手の待遇は随分とよくなった。今回大会は「サムライブルーの料理人」として知られる西芳照シェフが帯同、移動は全部チャーター機、選手の「出場給」も1260万円が支払われている。11年に日本が優勝したドイツ大会の650万円に比べれば雲泥の差だ。
男女格差の是正という点で先鋭的なのが、地元開催でベスト4の快進撃を見せたオーストラリアである。
「オーストラリア女子代表のSNSアカウントでは、男女格差を根付かせた張本人としてFIFAを批判。そして組合を通じた団体交渉により男子代表と同じ待遇の獲得に向け、こちらの方面でも戦っていくことを宣言しています」(同)
それを可能にしているのが同国の女子サッカー事情だ。今回大会で当初130万枚としていたチケット売上目標は150万枚に上方修正され、同国が決勝に駒を進めたこともあり、結果的に1次リーグ終了時点では170万枚突破と軽々と目標をクリアしてみせた。
ならば日本はどうかというと、男子サッカーのJ1に当たるWEリーグを00年に発足させたものの、22‐23年シーズンの平均観客動員はわずか1401人と低迷し切っている。
「WEリーグの規約では、選手の最低年俸は270万円で、1チームに15人以上を要する−という決まりがあるのですが、これを裏返せば、トップリーグのプロでもサッカーのみでは年収300万円以下の選手がいてもおかしくないということ。夢がありませんよね」(同)
盛り上がり欠如の責任は、決して選手にあるのではなく、ひとえに運営側にあるはず。まずはそこから改善に取り組むべきだろう。
(猫間滋)