隠れたヒット商品「横浜刑務所で作ったパスタ」はこうして作られた

 全国の矯正施設で作られた刑務所作業製品を展示・販売する「キャピックショップなかの」(東京都・中野/西武新宿線「沼袋駅」より徒歩7分)。売れ筋商品が並ぶレジの横のスペースでひときわ存在感を放っている新商品が「横浜刑務所で作ったパスタ」(330円・税込)だ。今年4月の発売以来、商品名のインパクトもあって、同店舗で好調な売れ行きを誇っている。
 
 公益財団法人矯正協会の刑務作業協力事業部の担当者はこう説明する。

「もともと横浜刑務所では90年代から給食用うどんの製造を行っていたこともあって、麺を製造する設備や麺づくりのノウハウが活かされています。2003年に販売スタートした細うどんはロングセラーとして認知されています」

 この「横浜刑務所で作ったパスタ」はフェットチーネと呼ばれる平打ちパスタ。デュラムセモリナと食塩のみを原材料とし、「卵不使用」「無添加」を売り文句にしている。この商品をいち早く取り上げた「朝日新聞」の記事によれば、東京矯正管区が今年2月に開催した新製品開発コンクールの自由企画部門で最優秀賞を受賞した逸品だという。いったいどんな経緯でこの商品が生まれたのか。

「刑務所で受刑者の職業訓練などを行う作業専門官が企画し、粉の配合など試行錯誤を重ねて商品化にこぎつけました。原材料となる小麦粉については矯正協会がその購入費を提供し、製造元である横浜刑務所が購入。そこで作られた商品を私どもで販売し、その売上を原材料費に充てるというサイクルになっています。また、収益の一部は犯罪被害者支援団体の活動の支援に使われています」(担当者)

 実際の味を聞くと「モチッとした食感は食べ応えがあり、麺の幅が広いため、普通のナポリタンやミートソースよりも、クリームソースのほうが相性はいいかもしれません」(担当者)とのこと。粉の配合から切り出した麺の乾燥、梱包にいたるまで、すべて刑務所内で行われる。

「刑務作業の中には、ひとつの部品だけ、もしくは一部の工程だけを請け負うケースが少なくありませんが、横浜刑務所の麺製品は1から10まで受刑者の手によって作られています。商品を世に送り出すという意識がより強くなることで、受刑者の社会復帰促進につながると思っております」(担当者)

 刑務所で作られたパスタを食べて、社会に貢献してみては?

(コレッシュ山本)

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