もしも企業が15億円もの所得隠しを行っていれば、そのトップは当局に告発・逮捕されてもおかしくないはずだ。今回、アサ芸はある不動産会社と政治家、そして税務署をつなぐ音声データを独占入手。「口利き交渉」のテーブルで語られた「元総理」は全面否定するが─。
「還付金が入るから。それを本庁に回して全部処理さすから」
「もうごめんだわ、税金だけは‥‥」
「じゃあ蒲田税務署の●●(※音声では実名)という担当には、還付金で相殺してくれ、って言っていいんですか」
「言うてください」
早口の関西弁と、それに呼応し安堵したようにつぶやく標準語の老人の声。事務処理の段取りを尋ねる男の声は、先の2人より一回りほど若い。アサ芸に音声データを提供した、西谷裕二氏(仮名)が口を開く。
「ほっとした様子なのは、東京都大田区にある、不動産業やホテル業を軸とする『A』という会社の、B会長です。そして会話を主導する関西弁の男は、B会長が所得隠しの裏工作を依頼したXという男です」
西谷氏がA社、ならびにB会長の不正を明らかにしたい、と意気込む背景には、
「私は過去にA社と取引していた、下請け業者のうちの1人です。まっとうな仕事だけでなく、架空発注を受けたり、A社が売却したい持ちビルの店子に対する地上げ行為を依頼されたこともあります。今は手を切りましたが、当時はよくしてくれた方も多い会社だけに、会長みずから不正行為に手を染め、破滅に導こうとするのが許せず、告発することを決めたんです」
西谷氏が語る経緯はこうだ。今年2月、A社に税務署の税務調査が入り、A社と関連企業2社について、合わせて約15億円もの所得隠しを行っていたことが発覚。当然、追徴課税が発生し、その金額はなんと約9億円に上ったという。
「ところがB会長が『3億ぐらいにならないか』と言い出しました。AグループはB会長が一代で築いたワンマン企業で、誰も逆らえません。私との関係からもわかるように、コンプラ違反も意に介さない、かなり古いタイプの経営者。そんなB会長が窮地に陥り頼ったのが、Xなのです」(西谷氏)
Xはこんな言葉をかけてB会長の懐に入り込んだ。
「ワシは自民党の麻生太郎副総裁をよう知っとる。財務大臣やっとったから、国税にも顔が利くんや。ワシが麻生副総裁や国税の担当と話して何とかしたる」
つまり麻生副総裁をはじめ、政界の実力者に金銭を払い、その見返りとして「追徴金を低く抑える」「事件化しない」などと豪語したのだ。法人税法に触れるばかりか、事実であれば贈賄罪に該当する犯罪行為。冒頭の音声は、この「口利き」を踏まえた税逃れに関する会話である。