日本史を変えた悪女たち(2)夫・家康を裏切った「築山殿」と信長妹「お市の方」の罪

 日本史に登場する悪女たちは百花繚乱! 今に至るもその強烈キャラは、驚天動地だが、ここにきて少なからず、新説を含め、「キャラ変」もあるようで‥‥。

 2023年大河ドラマ「どうする家康」前半のヒロインである築山殿(瀬名)は、従来、徳川を裏切って武田に通じた悪女と言われてきた。ところが有村架純が演じて、これまでドラマや映画で描かれてきた築山殿とは違って、家康とは仲のいい可愛らしくいい人に描かれている。ネット上では、この築山と家康の関係に賛否両論が寄せられている。

「築山殿は、今川義元の姪とされ、今川を滅ぼした家康を恨みに思っていたはず。家康は岡崎城を嫡男・信康に譲り浜松城へ移った時、築山殿を連れていかなかったので、家康との関係はよくなかったのでは。築山殿は、義元を倒した信長の長女で信康に嫁いできた徳姫(五徳)にいい感情を持てず、信康にわざと美女をあてがって徳姫との関係を壊すように仕向けたとも言われます。一方、徳姫は父である信長に12カ条に及ぶ信康と築山殿の悪口を手紙にして送ったと言われています。そこには、『築山殿が信康を引き入れ、武田と結ぼうとしている』と書かれていました」(河合氏)

 一方、桐畑氏が、「どうする家康」で気になるのは、北川景子演じるお市の方だという。

「お市の方は歴史ドラマでは、戦国一の美女としてそんなに悪く描かれたりすることはない女性ですが、冷静に考えると、夫の浅井長政の裏切りを信長に知らせた説があり、浅井家からすればとんでもない嫁です。娘である淀殿やお江が北ノ庄で死んでいたとしたら、淀殿の子の豊臣秀頼もいないし、お江がいなければ徳川3代将軍家光も生まれていませんから、歴史は全然違う流れになっていたかもしれないと思うと、お市の方は罪作りな悪女ということも言えますね」

河合敦(かわい・あつし)65年、東京都生まれ。多摩大学客員教授。歴史家として数多くの著作を刊行。テレビ出演も多数。最新刊:「日本史の裏側」(扶桑社新書)。

篠綾子(しの・あやこ)埼玉県生まれ。「春の夜の夢のごとく 新平家公達草紙」でデビュー。著書に「青山に在り」「歴史をこじらせた女たち」ほか、「更紗屋おりん雛形帖」「江戸菓子舗照月堂」シリーズなど。

桐畑トール(きりはた・とーる)72年滋賀県出身。お笑いコンビ「ほたるゲンジ」、歴史好き芸人ユニットを結成し戦国ライブ等に出演、「BANGER!!!」(映画サイト)で時代劇評論を連載中。

ライフ