毎年300人死ぬ場所にも!タイタニック見学だけじゃない「極限観光」のヤバすぎる中身

 タイタニック号見学ツアー中に消息を絶った潜水艇「タイタン号」の破片が発見されたのは6月22日(日本時間23日未明)。これを受け、米沿岸警備隊は「乗っていた5人の生存は絶望的である可能性が高い」と発表した。

 タイタン号の一部が見つかったのは、タイタニック号が沈む水深3800メートル付近。船首から500メートルほど離れた海底で、胴体後部には亀裂があったことから、経年劣化によって小さな傷ができ、水圧に耐え切れず「爆縮」した可能性も指摘されている。

「タイタン号の船主であるオーシャン・ゲート社によれば、このツアーの料金は8日間で1人当たり25万ドル(約3500万円)だといいます。また、欧米メディアは『ツアーは潜航前に、不慮の事故による死亡の責任を問わない、といった免責事項に署名が求められていた』などと報じていますが、メンテナンスの不備による過失も含め、今後、同社と被害者との間で、賠償等についてどのようなやり取りが行われていくのか、注目が集まっています」(全国紙記者)

 ところで、今回のタイタニック号見学ツアーように、近年は富裕層を中心とした宇宙旅行や、海底探検ツアーといった「エクストリーム・ツーリズム」いわゆる、極限の観光が世界的にブームだ。

 宇宙旅行では21年のスペースXによる「民間人だけの宇宙旅行成功」が記憶に新しいが、とはいえ、こちらは参加費も億単位。宇宙はさすがにハードルが高いと感じる富裕層に人気なのが、今回のような「深海観光」だという。

「深海は『地球最後のフロンティア』と呼ばれ、欧米では観光目的として、ごく普通に潜水艇が使用されています。ただ、大半が数十メートル〜数百メートル程度のもので、深さ4000メートル以上潜航できる潜水艇は世界に10隻しかなく、今回、消息不明になったタイタン号もその1つでした」(前出・記者)

 しかし、深海4000メートル以上潜航するにもかかわらず、同社は第三者機関の認証を受けておらず、米紙ニューヨーク・タイムズによれば、世界の海洋科学者や技術者などで構成する海洋技術協会(MTS)から、安全基準を満たしていないとの懸念が書簡で伝えられていた。だが、同社は「イノベーションとは既存の業界の枠組みから外れることを意味する」などと反論していたという。もっとも、深海に限らず「認証なしで営業するツアー」は少なくないようだ。

「宇宙や深海以外のエクストリーム・ツーリズムには、竜巻をベテランの『ストーム追跡者』と追いかけるトルネード追跡ツアーや、毎年300人が命を落としているボリビアのユンガス地域と首都ラパスを結ぶ世界で最も危険な通称『デスロード』をサイクリングするツアー、さらには、ガス化した硫黄が立ち込める湖をガスマスクをして散策するという、インドネシアの火山見学ツアーなど危険なツアーが多いのです。ただ、有事の際の保証はないと思ったほうがいい。つまり、自己責任。今後は宇宙滞在や、マリアナ海溝の最深部である水深1万メートル級の『チャレンジャー海淵』の見学ツアーも実現するでしょうが、命を守るためにも、事前の安全のチェックが重要になってくるでしょうね」(前出・記者)

 こうしたツアーは冒険というよりあくまで「観光」だ。極限の経験とはいえ、高い安全性が求められるべきだが…。

(灯倫太郎)

ライフ