偽旗作戦か!へルソン州「ダム決壊」で下流の街を襲う「数十年に及ぶ地雷地獄」とは

 どちらがウソをついているのか。

 ウクライナ南部ヘルソン州で6日に発生した、カホフカ水力発電所の巨大ダム決壊をめぐり、非難合戦を繰り広げているプーチンとゼレンスキーの両大統領。

 ダム決壊による洪水は下流にある都市・集落を襲い、ドニプロ川下流のヘルソン州の町は氾濫した水により町全体が飲み込まれた。ダムの水は、現在ロシア軍が占拠するザポリージャ原発の冷却水としても利用されている。

「ダム決壊について、ウクライナ軍の情報機関はロシアが意図的に爆破したとの声明を発表。ゼレンスキー大統領もロシアに刑事責任があるとし、ウクライナ検察が大規模環境破壊で捜査していると糾弾しています。一方、ロシア大統領府は、ウクライナの砲弾がダムに当たったのが原因と断言。プーチン大統領はトルコのエルドアン大統領との電話会談で、ダムの破壊は『野蛮な行為の明白な例だ』などと痛烈に批判。お互い“相手がやった”と非難しあう状況が続いています」(ロシアウォッチャー)

 ただ、ウクライナによる大規模反転攻勢が始まったとされるタイミングもあり、ロシア側が時間稼ぎのためにダムを破壊したのでは、という見方が強いのも事実だ。

 実は過去にも、ドニプロ川のダムが破壊されたことがあった。1941年の第二次世界大戦中、ソビエト連邦はナチス・ドイツの侵攻を食い止めるため、最高司令官スターリンの命令でダムを爆破。“犯人”をドイツのせいにする「偽旗作戦」だったが、爆破による洪水で多くの自国民を犠牲にしている。

 また、この際に問題となったのが、氾濫した水により埋設されていた地雷が押し流され、各地で爆発が多発したことだ。実は、今回も同様の地雷爆発がすでに起こり始めているという。
 
「ヘルソン州にある危機管理センターは8日、地雷などの危険物流出については水が引き次第すぐに探査を開始すると表明していますが、ダム下流域には対人地雷や対車両地雷の地雷原があるといわれますからね。2015年には、デンマークの水中から第二次大戦で使用されたまだ機能している地雷が発見され、衝撃が走ったことがありました。赤十字国際委員会(ICRC)は、今回の洪水で拡散した地雷も今後数十年にわたり、大きな危険をもたらす恐れがあると警告しています。つまり戦争が終わっても市民は長い年月、地雷地獄に悩まされ続けるということです」(同)

 戦争により、またもや罪もない市民が、さらなる苦渋を強いられることになってしまった。

(灯倫太郎)

*画像はゼレンスキー大統領のSNSより

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