トランプ氏が危機感を募らすのは、前例があるためではないか。08年の大統領選に民主党から出馬への意欲を見せていたジョン・エドワーズ氏(69)の一件だ。かねてから女性映像作家との不貞疑惑が持ち上がっていたが、指名候補から退くとともにそれを認め、その後に隠し子がいることも告白。そして11年、揉み消しに選挙資金を流用したとして刑事訴追されたのだ。
「一部無罪などがあって、最終的に訴追は取り下げられました。でも、ガンを患いながら夫をかばってきた妻とは離婚して、妻は亡くなります。妻を失うだけでなく、政界での道も失っています」(外信部記者)
来年の大統領選で返り咲きを狙うトランプ氏にしてみれば、絶体絶命のピンチなのだ。しかも、大統領経験者が下半身スキャンダルで失脚とは前代未聞‥‥かと思いきや、アメリカでは珍しいことでもなかった。
記憶に新しいところでは、第42代大統領であるビル・クリントン氏(76)のスキャンダルがある。在任中の98年にホワイトハウスのインターン生だったモニカ・ルインスキー氏(49)との不貞が発覚。こともあろうに大統領執務室で情事を重ねていたことが報じられ、クリントン氏も認めざるを得なくなり、「不適切な関係を持った」と証言するに至った。
これには世論の批判も高まり、弾劾裁判にまで発展。賛否が拮抗したものの、有罪判決に必要な3分の2に達せず、辛うじて罷免だけは免れた。とはいえ、スキャンダルが過熱する過程で、「葉巻を挿入した」「体液で彼女の着衣を汚した」などマスコミによって色事の詳細が暴露された。国際ジャーナリストの山田敏弘氏が解説する。
「クリントン氏は現役大統領で、神聖な大統領執務室での不貞行為とあって、全米が揺れました。そのツケか、その後は大した公職にも就かず、現在に至っています。逆に告白を行ったルインスキー氏は暴露本を出版、テレビやCM出演などで高額なギャラを得たと言われています。その後、オリジナルブランドを設立して億万長者になったと伝えられています」
明暗分かれる結末を迎えたが、夫の不貞に耐えたヒラリー・クリントン氏は16年に民主党候補として大統領選に出馬。結果、トランプ氏に敗れている。
「そのヒラリー氏にも、不貞説が持ち上がったことがありました。93年に大統領次席法律顧問のビンス・フォスター氏が公園で不審死していた。このビンス氏の死を巡っては、ホワイトウォーター疑惑との関連がささやかれていましたが、一方でヒラリー氏と愛人関係にあったとも言われていました」(外信部記者)
リベラルで知られる民主党だけに、男女関係に関してもリベラルなのかも‥‥。
(つづく)