米メタが「VR」ヘッドセットを「大幅値下げ」それでも普及が期待できないワケ

 3月3日、米メタ社は仮想現実(VR)ヘッドセット「クエスト」シリーズの2機種を大幅に値下げすると発表した。VR端末の普及が進んでいないことが原因とみられている。

 値下げされるのは「クエスト2」の256GBモデルと「クエストプロ」。中核機種の「クエスト2」128GBモデルは据え置きとなるが、256GBモデルは7万4400円(以下税込み)から6万4405円へ9995円値下げ。また、上位機種の「クエストプロ」は22万6800円から15万9500円へ、実に6万7300円も値下げされる。

 クエスト2は昨年8月に128GB版と256GB版がそれぞれ2万円以上値上げされ、メタ社が8割以上を占めていたメーカー別VR端末の販売台数シェアが8割台から4割台にまで大幅急落。22年はクエストシリーズに限らず、VR端末自体の販売台数が世界全体で落ち込んでいた。また今回の大幅値下げには、今年2月にライバルであるソニーが「プレイステーションVR2」(PSVR2)を発売したことも影響したとされる。

「メタ社はメタバースに年間100億ドル(約1兆3600億円)を投資して社運を懸けていることから、販売台数の減少を何としても食い止めなければなりません。ただ、VR端末には《装着が面倒くさい》《スペースを確保するのが煩わしい》《重くて長時間の利用はできない》といった意見が見られ、PSVR2にしても予約の少なさから発売前に『初期出荷台数が調整される』と報じられたほど。今回、クエスト2の256GBモデルは約1万円の値下げになるものの、昨年8月以前はそれより安かったのですから、それを考えれば効果はさほど期待できないのではないでしょうか」(ITジャーナリスト)

 VRの普及には、まだまだ時間がかかるのかもしれない。

(小林洋三)

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