「メタバース空間」で横行する性的ハラスメント!「没入感」の進化で被害拡大の懸念

 技術の発達はそれまで不可能だったことが可能になるので、あたかもバラ色の世界が待っているように思える。だがSNSの発達でネット上の誹謗中傷が社会問題となるなど、「正」だけでなく「負」の側面も顕在化しがちだ。メタバースもどうやら事情は同じらしい。本格的に広がりつつあるメタバースの仮想空間上で、リアルな世界同様に性的ハラスメントが横行しているのだという。

「メタバースに関する著作も出しているバーチャルYouTuber(VTuber)でブロガー、作家、歌手でもある「バーチャル美少女ねむ」と、スイスの人類学者の「ミラ(リュドミラ・ブレディキナ)」がメタバースにおけるハラスメントの実態を任意で調査。11月8日に無償公開されましたが、そこで聞き取った日本やアメリカ、ヨーロッパを始めとした世界のソーシャルVRユーザー876名のアンケート調査の結果によれば、全ユーザーの半数がVRのプレイ中に何らかのハラスメント行為を受けたことがあるというのです。全体的には性的ハラスメントが多く、被害傾向は両性愛者のうち61.8%が受けており、異性愛者の53.1%より高く、セクシャルマイノリティがターゲットになりがちなようです」(ネットライター)

 その中身も、性的な言葉でのハラスメントだったり、性的に触られる、不適切なアバターを見せられる等というものだというから、リアル社会とさほど変わらないようだ。今後、技術的にメタバース空間への没入感がもっと高まれば、リアル社会でのそれよりある意味で不快感は増すかもしれないし、もっと広く普及すれば頻度も増すことになるだろう。

 いくら最新技術が発達したとしても、それを使うのが人間だとすれば人間の負の側面が逆に浮き彫りになることもある。中身は異なるが、似たような例で思い起こされるのが、マイクロソフトが16年に発表したAI「Tay」が辿った道だ。

「TayはSNSで交わされるティーンエイジャーの会話等から学習して独自に会話を行える人工会話プログラムのAI(チャットボット)でしたが、発表直後から性差別や人種差別の発言を繰り返したため、すぐさま公開停止に追い込まれたのです。原因はツイッターの書き込みによって不適切な発言を行うよう“教育”されたためで、今年10月にはメタがやはりチャットボットを公開しましたが、こちらはTayの失敗を受けてTayであったようなトラブルを回避する設定が施されました」(同)

 AIならトラブルが生じないように設定できるのかもしれないが、いずれにせよ、結局は運用する人間次第で最新技術も歪んだものになりかねないということだ。

 同じく最新の成長分野の宇宙開発にしたところで、宇宙ゴミの問題や宇宙戦争のスターウォーズ問題が、技術が進歩した分だけ顕在化しており、最終的に人間にその技術の使い方が問われるという意味では同じことだろう。

(猫間滋)

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