中国が、カナダ国内で法的に認められない「警察署」を設置、同国に居住する中国人に対し、帰国を強要しているとの通報を受け、捜査に着手している—。カナダの国家警察に当たる王立カナダ騎馬警察(RCMP)がそう発表したのは10月27日のことだった。
警察は詳細なコメントは控えているが、「カナダの社会や個人に対し、外国が脅したり危害を加えたりしている恐れがあり、非常に深刻に受け止めている」と説明した。
同様の事例が、オランダでも報告されているという。
「オランダの報道機関『RTLニュース』と調査報道プラットフォーム『フォロー・ザ・マネー』によると、オランダでも同国在住の中国人に対し、中国への帰国を強く求める組織的な嫌がらせや、脅迫があったといいます。オランダ外務省のホヴェンカンプ報道官は、『オランダ政府はそういた行為について中国政府から知らされていない。それが事実だとしたら違法だ』と述べました。実はここ最近、カナダやオランダに限らず、世界各国で同様のケースが報告されているのです」(全国紙記者)
中国が海外在住の中国人に対し帰国を強要している−−いったいどういうことなのか。
これについて、スペインに本拠を置くNGO「セーフガード・ディフェンダーズ」は、「Chinese Transnational Policing Gone Wild」(中国の国境を越えた取り締まりが常軌を逸する)と題した報告書を発表している。
「報告書によれば、中国は今、世界中で中国人を取り締まる、通称『海外110』と言われる中国人のための警察署を設置しているというんです。警察の設置は、問題のある中国人をあぶり出し、本国へ帰国させることを目的としています。報告書では、警察署は21カ国で計54カ所も存在し、東京にも設置されているといいます。『警察官』は狙った中国人に対し自発的に帰国するよう促すのだそうです」(前出・全国紙記者)
当然ながら、国外で警察行為を行うことは国際的に認められてない。さらに「自発的な帰国」といえば聞こえはいいが、報告書によれば、
「実態は、対象中国人の中国国内にいる子供の教育を受ける権利を奪ったり、家族や親戚に徹底して『連帯責任』を負わせ、帰国を促すのだそうです。中には中国国内に残る家族の健康保険やパスポートを無効化し、公的な補助金をすべて停止するといった行為も行われているといいます。これが事実なら、『海外110』というよりもはや秘密警察です」(前出・全国紙記者)
突然姿を消した(帰国させられた)中国人が、自国でどんな処遇を受けるのか‥‥その詳細はいっさい不明なのである。
(灯倫太郎)