「30万人兵士召集」にロシア世論も二分!プーチン逆ギレ「核使用」威嚇の現実味

 ロシアのプーチン大統領が21日の国民向けテレビ演説で、ウクライナでの軍事作戦の激化を受け、国民の「部分的な」動員を可能とする大統領令に署名したと発表。ショイグ国防相によれば今回の動員は30万人規模で、特に軍隊への勤務経験や軍事的な専門性を持っている市民を対象に、同日から動員が始まったことを明らかにした。ロシア情勢に詳しいジャーナリストが語る。

「ロシア軍ではかねてから、刑務所収監中の受刑者に対しても、恩赦をちらつかせ戦争に駆り出すなど、なりふり構わぬやり方で兵士動員に躍起になっていましたが、それでも人員が確保できなかった。結果、今回の動員に踏み切ったわけですが、予備役中心の『部分的』とはいえ、ついに一般の国民を戦地に送り込むことになるわけですからね。ついに、国を挙げた戦争に踏み込んだということ。更なる長期化は避けられない状況になってきました」

 プーチン大統領は、ウクライナ軍がクリミアやウクライナと隣接したロシア領内を攻撃しているとも主張し、「わが国の領土保全が脅かされた場合、ロシアとその国民を守るためにすべての手段を行使するのは確かだ。はったりではない」と言明。「われわれを核兵器で脅迫しようとするものは、風向きが自分たちの方向にも向くことを覚えておくべきだ」と警告。つまり、本気で核の使用を考えていると威嚇したのである。

 プーチンの発言を受け、米国家安全保障会議のジョン・カービー報道官はテレビ番組で「非常に深刻にとらえている」とし、「核保有国として無責任な発言だ」と批判。NATOのイエンス・ストルテンベルグ事務総長も「危険で無謀」と非難している。

「実は、プーチンがこの発言をする3日前の18日、バイデン大統領が米CBSテレビのインタビューで、ウクライナ侵攻で劣勢にあるロシアが化学兵器や戦術核兵器を使えば、米国も対応策を取り『重大な結果を招くことになる』『第2次大戦後なかった状況へと戦争を変質させる』と指摘し、『使ってはならない』とあえて3回繰り返しているんです。これは裏を返せば、追い詰められたプーチンが本当に核を使う可能性があることを示唆しています。これまで核使用を巡る発言は『相手に対する心理的な圧力』で、ロシアが本当に核を使うのは『モスクワの目前まで敵が侵攻した』場合のみと言われてきましたが、国民を動員し、その多くが戦死したとなれば話は別になる。つまり、核使用ががぜん現実味を帯びてきてしまったということです」(同)

 ロシアの独立系メディア「メドゥーザ」によれば、ウクライナとの戦争でロシアが限定的に使用すると想定される「非戦略核兵器」は推定約800〜1900発。ただ、実際に使えるのは550発前後だというのだが、

「仮に、ロシアがNATOの進軍を阻止するために、カリーニングラード近郊の基地から警告として核爆弾を1発放ったとしましょう。当然、NATOも1発の戦術核で報復攻撃を開始。瞬く間にヨーロッパを舞台とした双方の核攻撃がエスカレートし、ロシアはNATOを叩くため、爆撃機や短距離弾道ミサイルを使って300発の核を使用する。今度は、アメリカ本土や潜水艦からロシアに対し核攻撃が行われ、『核には核』の報復合戦により、最終的に50億人を超える死者が出るとの予測を示した論文もあります。そのきっかけとなるのが、1発の戦術核。つまり、いったんレッドライン超えたら最後、全面的な核戦争へのエスカレーションを止めるのは困難になるということです」(同)

 誰でもいい、誰かプーチンを止めてくれ! 全世界がそう願っているに違いない。

(灯倫太郎)

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