「今日初めて正直に言いますけど、中畑さんのことばっかり取り上げて、中畑さんのことを責めてるように映るかもしれないですけど、中畑さんに対して全然(何も)思っていない‥‥」
話は35年前、87年9月20日に広島市民球場で行われた「広島対巨人戦」まで遡る。「昭和の怪物」と呼ばれた巨人の江川卓が、広島の小早川毅彦から2打席連続のホームランを浴びた日だ。
とくに2本目は、巨人が1点リードした9回裏。ツーアウト後の逆転サヨナラ本塁打となり、これを機に江川はその年限りでの引退を決意する。だが、この打席の前に、のちにドラマとして語られるいわくつきのプレーがあった。
広島のバッターは高橋慶彦。平凡なセカンドゴロかと思われた打球を一塁手の中畑清が守備位置を越えて捌き、ベースカバーに入った江川のはるか後方にボールを投げてしまい、江川は捕球できず高橋は内野安打となった。
この時、二塁を守っていた篠塚和典氏をゲストに招いて回顧したのが、江川氏のYouTubeチャンネル〈江川卓のたかされ【江川卓 公式チャンネル】〉の9月3日更新回。
「篠塚さんが捕ったらアウトですか?」「アウトでしょうね」などと篠塚氏と話す江川氏。そんなやりとりから中畑氏のミスとして笑いをとる展開にも思えたが、江川氏は冒頭の発言に続けて、こう語ったのだ。
「なぜかと言うと、僕、セカンドゴロだと思った瞬間、0コンマ何秒スタート遅れてるんですよ。それはピッチャーとしてダメだんですよ。(打球が)セカンドの方向に行ったら、必ずスタート切らなきゃいけない。8割ぐらい私のミス…」
ゆえに、中畑氏のスローイングとタイミングが合わなかったと反省した江川氏。はたして、これがアウトになっていれば、あの伝説の引退会見もなかったのかもしれない。
(所ひで/ユーチューブライター)