金満理事逮捕の陰で…五輪メダリストのジリ貧生活(1)人生の岐路に立つウルフ・アロン

 招致段階の試算額よりも約2倍の総経費1兆4238億円にも及んだ昨夏の東京五輪。どんぶり勘定ばかりか、大会組織委員会のドンとスポンサー企業の汚職事件まで発覚した。五輪で潤う者がいる一方で、2年後の花の都・パリを目指すアスリートたちの中には、しんどい営業活動を余儀なくされている者も。まさに〝貧すれば鈍する〟悩ましい実態に迫った。

 昨夏の東京五輪は、金メダル27個を含む史上最多の58個のメダルラッシュに沸いた。その陰でスポンサー選定をめぐる収賄事件が起こっていようとは─。全国紙社会部デスクがため息交じりに解説する。

「大会組織委員会理事だった高橋治之容疑者(78)が、紳士服大手『AOKIホールディングス』の五輪オフィシャルサポーター契約で便宜を図った見返りに5100万円の賄賂を受け取った疑いがかけられている」

 02年の日韓ワールドカップや91年の世界陸上東京大会の招致に深く影響を与えた〝スポーツ界のフィクサー〟の逮捕劇。まさか、日本選手団の象徴とも言える白いジャケットと赤いボトムスの公式ウェアを手掛けた企業に不正が介在していたとは‥‥誰もが想像できなかった。

「今後、一部メディアで報じられていた不正な金の流れを検察に徹底的に洗われる予定。元体操の田中理恵(35)が、高橋容疑者の剛腕で理事に抜擢されたと言われるだけに他の五輪に携わった元アスリートにも問題が飛び火しそうです」(社会部デスク)

 華やかに見えた祭典の裏で飛び交う札束。私利私欲に走る大会関係者を横目にアスリートたちの中にはジリ貧生活を強いられている者も多い。その最たる例が柔道界とも言われる。統括する全日本柔道連盟のシブ賃体質が見え隠れしているのだ。スポーツ紙デスクが明かす。

「日本オリンピック委員会(JOC)から、金メダルで500万円、銀が200万円、銅なら100万円の報奨金が出ますが、全柔連は『メダルは当たり前』のスタンスで報奨金をビタ一文出さない。遠征や合宿にかかる強化費をプールさせるためといいますが、メダルを獲得した柔道家たちのフラストレーションは収まりません」

 その中でも、メディア出演を増やして副収入を得ているのが柔道男子100キロ級金メダリストのウルフ・アロン(26)だ。講道館関係者が語る。

「8月22日放送の『しゃべくり007』や6月12日放送の『世界の果てまでイッテQ』(ともに日本テレビ系)など、バラエティーを中心に引っ張りだこです。文化人枠のため出演料は1本あたり5万〜10万円程度に抑えられているといいます。それでも、引退後のセカンドキャリアを見越して顔を売りたいというのが本音なのでしょう」

 意外にも、ウルフは選手生活の岐路に立たされていたのだ。

「24年に控えるパリ五輪への意欲を言葉にしているが、五輪後初の実戦だった4月の『全日本選抜体重別選手権』を右足のケガで欠場。同大会が選考会を兼ねていた10月の『世界選手権』の代表から漏れてしまいました。しかも、8月にカザフスタンで開催された『アジア選手権』もコロナ陽性判定で欠場してしまいます。ライバルの飯田健太郎(24)が伸び盛りなだけに、連覇どころかパリ五輪出場すら黄色信号が点灯しているのです」(講道館関係者)

 対して、いまだにパリ五輪への挑戦を明言していない男子73キロ級金メダリストの大野将平(30)も、悩ましいキャリアのY字路に立ち往生している。

「格闘技イベント『RIZIN』への参戦です。五輪連覇の実績を見込んで億単位の金額が積まれているんだとか。過去に、『K─1』が井上康生氏(44)に20億円オファーを出した噂こそありますが、これまで多くの柔道メダリストが高額なファイトマネーもあって総合格闘家に転身しました」(スポーツ紙デスク)

 バルセロナ五輪78キロ級金メダリスト吉田秀彦氏(52)や北京五輪100キロ超級金メダリストの石井慧(35)など、考えた末に苦渋の転身を遂げた柔道家は枚挙に暇がない。

「ただでさえ、50万円〜100万円単位で稼げる企業主催の講演会もコロナの影響で縮小気味です。このまま事態が収束しなければ、栄誉を大金に換金するために総合格闘家に転身する流れが再燃しそうですよ」(スポーツ紙デスク)

 年末の格闘技イベントに金メダリストが緊急参戦。予想だにしないビッグマッチに期待は高まるだろうが‥‥。

*「週刊アサヒ芸能」9月8日号掲載

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