女囚はトイチと愛を育み、男性受刑者はイチモツに…川柳で読み解く獄中生活

 8月1日に発売される影野臣直氏の新著「刑務所川柳 獄中で泣くヤツ、笑うヤツ」(駒草出版)には311句の川柳が収録されている。全国から寄せられた中から傑作を厳選して紹介していこう。
 
 とある女囚の一人は、やり場のない性的な欲求を五七五に込めて、このような句を詠んでいる。

〈肌恋し トイチに縋り 恋癒す〉(女性)

 トイチといっても闇金の十日一割(トイチ)ではない。影野氏が解説する。

「カタカナの〝ト〟が男性の立ち姿に似ていることからスラングで男役のこと。宝塚歌劇団のように、甘い言葉を囁き合ったり、運動の時間にこっそり手を握り合って愛を育むのですが、抱き合っている現場をおさえられたら、仲良く懲罰となります」

 一方の男衆は来る出所の日に備えてイチモツに手を加え始める。

「俗に言う〝真珠入り〟です。材料はもっぱら碁石を削って小さくしたもの。工場などでこっそりプラスチック部品を加工して針状の道具を作り、玉をひとつひとつ男性のシンボルに埋め込んでいくのです」(影野氏)

 ところが、そんな玉入れ行為に落とし穴が。

〈塀の中 秋の玉検 キノコ狩り〉(男性・新潟刑務所)

 刑務所側も受刑者の〝下心〟をお見通しのようだ。

「2カ月に一度、受刑者が集められ、下半身のチェックを受けます。そこで異物挿入が確認されたら懲罰。もしも服役前から真珠が入っていた場合は、その数をきっちりカウントしておき、玉の数が増えていたらアウトですね」(影野氏)

 地獄の沙汰も金次第——。刑務所にも貧富の差は歴然と存在する。

「シャバから持ち込んだブランドのタオルや官給品ではない粋な日用品で見栄を張りたがるもの。現金類は持てないので、官に所持金を預けて、本や必需品を購入します。あるヤクザは1000万円単位の現金を持ち込み、帳簿をつける計算工(計算係)から『すごい大物だ』と噂が広まりました。実際は金の管理を任せられる人間がいなかったんですけどね‥‥」(影野氏)

 買い物に欠かせないのが左手の人差し指だ。受刑者は購入希望品を記したリストに指印を押すのが決まりのようで、

〈買い物は 財布ではなく 指を出す〉(男性)

 塀の中では昔からキャッシュレス決済だった!?

 ムショ暮らしを終えてようやく出所。シャバの生活にも慣れてきた頃、ふとテレビをつければ、あのNHKの名物番組が。

〈のど自慢 見れば刑務所 思い出す〉(男性)

 何を隠そう、53年にテレビ放送がスタートした「NHKのど自慢」は、大相撲中継と並ぶ人気番組だ。
 
「昭和の時代から刑務所では『のど自慢』と題したカラオケイベントが行われ、ストレス発散の場となりました。日曜お昼の番組も大人気で、どの出演者が多くの鐘を鳴らすのか、切手を賭けて盛り上がる受刑者が後を絶たないそうです」(影野氏)

 リアルな獄中生活を浮き彫りにする受刑者の「解放句」に触れてみては?

*「週刊アサヒ芸能」8月4日号掲載

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