7歳の次は10歳…北朝鮮「キッズ・ユーチューバー」続々登場の裏事情とは

 友人と一緒にかき氷を食べながら、流ちょうな英語で《皆さんが平壌に来ることになれば、この国で一番おいしいかき氷を紹介します》と微笑む、ソンアという名の少女。

「Sary Violine」と題するこのユーチューブ・チャンネルに、平壌に住むという彼女の姿が公開されたのは19日のことだ。

 実はここ数カ月、ユーチューブ上に複数の北朝鮮「キッズ・ユーチューバー」の動画がアップされ、話題になっている。

「ソンアと名乗るこの少女が、最初の動画をあげたのは4月下旬。紹介欄には11歳の小学5年生とあり、これまでに5本の映像を掲載。撮影場所は、おそらく平壌市内で、内容はいずれもごく一般的な自身の日常を切り取ったものばかりなのですが、物珍しさも手伝ってか1本当たり8万〜15万回ほど視聴されています」(北朝鮮ウォッチャー)

 1本目の映像では、流ちょうな英語で《私が一番好きな本は、J.Kローリングが書いたハリー・ポッター》と自己紹介。《私がどうやって、英語をこんなに上手に話せるのか不思議でしょ? なぜって、小さいころからお母さんに英語を教えてもらっていたから》として、《次回はムンス(紋繍)遊泳場で会いましょう》と予告。実際7月23日に、プールで泳ぐ映像を公開したのだが、この遊泳場は金正恩総書記が鳴り物入りで完成させた豪華ウォーターパークである。

「元北朝鮮の外交官で、現在は韓国の保守政党『国民の力』議員であるテ・ヨンホ氏の談話を紹介した20日の米国・北朝鮮専門メディア『NKニュース』によれば、ソンアは、同氏がロンドン駐在の北朝鮮大使館に勤務していたころ、一緒に働いていた外交官イム・ジュンヒョクの娘で、彼女の曽祖父は2015年に死去した北朝鮮人民軍のリ・ウルソル元帥だと伝えています。とはいえ、北朝鮮では住民がインターネットを使うことは禁じられているため、このチャンネルには朝鮮労働党宣伝扇動部が関与しているはず。背景に、何らかの意図があることは間違いないでしょう」(同)

 というのも、ユーチューブを運営するグーグルは、これまで『朝鮮の今日』や『わが民族同士』といった北朝鮮のチャンネルを、露骨的かつ好戦的な映像を掲載する対外宣伝メディアと位置づけ、規約違反などを理由にアカウントを停止。さらには、平壌在住の20代女性が出演するチャンネル『Echo of Truth』も、遠回しなやり方で体制宣伝を行っているとして、2020年12月、利用規約違反を理由にアカウントを停止した。

「ところが、北朝鮮に住む7歳の少女の学校生活や買い物の様子など日常を紹介する『NEW DPRK』というチャンネルは、開設から2年がたった今も閉鎖されていません。北朝鮮はそこに目を付けたようなんですが、ただし『NEW〜』は少女が朝鮮語で話し字幕が入る形なので、より外国人へ向けてアピールするため、英語が話せる少女を起用した可能性が高い。とはいえ、最終目標はプロパガンダなので、グーグル側のチェックも厳しいでしょうから、果たして思惑通りにいくかどうかは未知数でしょうね」(同)

 さて、北朝鮮による「ユーチューブ」戦略は功を奏するのか…。

(灯倫太郎)

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